研究実績の概要 |
4次元多様体の滑らかな族に対するSeiberg-Witten方程式から得られる制約を研究した.前年度までは閉4次元多様体の族に対する考察を行っていたが,本年度からは境界付き4次元多様体の微分同相群と同相群の比較の研究に着手した. 本研究課題の開始直前に,Donaldsonの対角化定理およびDonaldsonの定理B,Cと呼ばれる制約の族に対する対応物をBaraglia氏が証明した.これは閉4次元多様体の微分同相群と同相群の比較に強力な応用を持っていた.本年度は,谷口正樹氏との共同研究で,Baraglia氏の結果の境界付き4次元多様体版を確立し,論文にまとめarXivで公開・学術誌に投稿した.証明にはManolescuによるSeiberg-Witten Floer安定ホモトピー型を用いる.Baraglia氏の結果の証明にはBauer-Furuta不変量の族版が用いられていたが,我々は相対Bauer-Furuta不変量の族版を定義し,そこから情報を引き出した.相対Bauer-Furuta不変量の受け皿にSeiberg-Witten Floer安定ホモトピー型が現れる. 応用として,境界付き4次元多様体であって,その微分同相群から同相群への包含写像が弱ホモトピー同値でない例を大量に検出することができた.この結果は境界の3次元多様体のFroyshov不変量と呼ばれる不変量や,Manolescuによるその変種であるα,β,γと呼ばれる不変量の言葉で書かれるものである.Froyshov不変量やα,β,γは,境界付き4次元多様体の交叉形式への制約や三角形分割予想への応用が知られていたが,微分同相群へ応用できることは新しい.
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