最終年度もモジュラス付きモチーフ理論に関する研究を行なった。 本研究課題の最も重要な目標である「モチーフ理論の一般化」、すなわちモジュラス付きモチーフの基礎理論の構築は、前年度までに出版受理された一連の論文で達成された。そこで、最終年度となる今年度は、理論のさらなる発展と応用に注力した。これは当初の想定を超えて展開しつつあるプロジェクトであり、本研究課題が終了した後も研究を継続していく可能性が高いため、すでに完成した体上の理論について国内外の研究集会で発表することで本研究課題の総まとめを行うと同時に、現在新たに展開しつつあるプロジェクトの進展状況を資料として取りまとめ、次の研究へ向けた下準備を行う期間と位置付けて研究を行なった。 しかし結果として、次への展開の下準備という当初の目標を大きく超えて、de Rham-Witt複体のモチーフ理論的な新たな構成や、ホッジコホモロジーの表現関手の構成といった、モジュラス付きモチーフ理論の具体的な応用を得ることができた。前者についてはプレプリントにまとめてarXivに公開すると同時に、査読付き国際論文誌に投稿済みである。また、後者についてもドラフトを準備中であり、近日中に公開予定である。さらに、モジュラス付きモチーフ理論のさらなる基盤整備に向けた試験的な研究についても論文を一編まとめ、arXivに公開した。 以上の実績により、本研究計画全体及び最終年度の目標設定を大きく超えて、従来のモチーフ理論に対するモジュラス付きモチーフ理論の優位性の実証に成功するとともに、今後の研究の展開について非常に具体的な視座を得ることができた。
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