研究課題/領域番号 |
19K23415
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
井上 悠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (90843342)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
トポロジカル絶縁体と超伝導体の接合を作製して、ジョセフソン接合を形成すると、電荷ゼロの粒子「マヨラナ粒子」として説明される量子力学的状態が現れると考えている。この量子力学的状態を実験的に観測してその性質を明らかにすることは、物性物理学の発展と、これを新しい素子機能として応用することに貢献する。上記の量子力学的状態を観測するには、まず、高品質のジョセフソン接合を作製して、接合を介した非散逸伝導を観測することが必要である。 ② 2019年度には、接合のベースとなるトポロジカル絶縁体薄膜の作製に取り組んでいたので、2020年度は、このトポロジカル絶縁体のエピタキシャル薄膜を用いてジョセフソン接合の作製を行った。これまで化学ドープでトポロジカル絶縁体の金属性の制御を行ってきたが、まずは複雑性を排除するために化学ドープを行わないトポロジカル絶縁体薄膜を用いることとした。 東北大学にある、ナノテクノロジープラットフォームのクリーンルーム設備と金属材料研究所の共同利用装置を使用して、素子作製のための微細加工を行った。リソグラフィには、加速電圧130 keVの電子線描画装置、超伝導体の蒸着にはスパッタリングを用いた。リソグラフィプロセスを工夫することで、構造が100 nmの制度で精密に制御されたジョセフソン接合の作製プロセスを確立した。今後は低温での電気特性評価を行って、ジョセフソン接合を介した非散逸伝導の観測を行っていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス蔓延により、当初計画していた実験を行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度に作製したジョセフソン接合素子を低温に冷却して、接合を介した非散逸伝導の観測を行っていく予定である。当初、海外の共同研究先で、極低温での電気輸送特性評価を行う予定だったが、新型コロナウイルス蔓延により実施が困難になった。そのため、最低到達温度が十分ではないが、研究室の低温冷却装置を用いて評価を行うことを先に行い、より最低到達温度の低い冷却装置が使用可能な、国内の研究施設を探すことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延により、計画していた実験を行うことができなかったため。次年度は今年度行うことができなかった実験を実施するために助成金を使用する予定である。
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