研究課題
本研究課題では、トポロジカル絶縁体と超伝導体のジョセフソン接合に形成されると考えられている、量子力学的な「マヨラナ粒子」を観測することを通して、物質中のマヨラナ粒子を利用した情報処理技術のための基礎技術を開拓することを目的としている。物質中のマヨラナ粒子を観測するためには、接合の電気抵抗がゼロとなるジョセフソン効果の観測が前提条件となるために、接合素子を作製して、ジョセフソン効果を観測することに取り組む。最終年度となる2021年度は、2020年度までに確立したトポロジカル絶縁体と超伝導体の接合作製技術で作製した、ジョセフソン接合素子の電気特性評価を行った。温度3 K以下で、電気抵抗がゼロとなる非散逸伝導を観測し、ジョセフソン効果の観測に成功した。興味深いことに、化学ドープを行って、トポロジカル絶縁体のフェルミレベルを制御した素子を用いて、同様の測定を行ったところ、温度2 Kまで素子を冷却しても非散逸伝導は観測されなかった。従来、トポロジカル絶縁体のフェルミレベルを制御した素子の方が物質中のマヨラナ粒子の観測に有利であると考えられてきた。本研究結果は物質中のマヨラナ粒子の観測と、その前提条件となるジョセフソン効果の条件について洞察を与えることで、物質中のマヨラナ粒子を利用した応用技術のための基礎技術開拓に貢献する。今後の研究展開として、本研究成果で得られた知見と、トンネル分光等、接合に形成される準粒子状態を観測する測定手法を組み合わせることで、物質中のマヨラナ粒子の揺るぎない観測と制御方法の確立につながると考える。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Nature Communications
巻: 12 ページ: 5345
10.1038/s41467-021-25705-1