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2019 年度 実施状況報告書

液体酸素における磁場誘起液体-液体相転移の探索

研究課題

研究課題/領域番号 19K23421
研究機関東京大学

研究代表者

野村 肇宏  東京大学, 物性研究所, 助教 (20845987)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2021-03-31
キーワード液体-液体相転移 / 酸素 / 強磁場
研究実績の概要

液体-液体相転移(liquid-liquid transition, LLT)とは、2種類の異なる液体間の相転移である。LLTの存在は液体という無秩序な状態における局所的秩序の証明とも言え、近年大きな注目を浴びている。これまでに温度と圧力を制御したLLTの研究は存在するものの、磁場を外部パラメタとした研究は存在しない。本申請では、磁性分子液体である液体酸素を舞台とした磁場誘起LLTを提案し、その実験的観測を目指した。
初年度は一巻きコイル法を用いた液体酸素の光学測定システムを構築した。具体的には液体酸素を溜めるためのセル開発、光ファイバーの配置などを最適化した。ここで、大口径光ファイバーや高速光ディテクターを購入し、飛躍的に測定精度を向上させることに成功した。
100テスラまでの光散乱・透過測定を実施した結果、光信号強度は磁場に対して一定であり、相転移を示唆するような結果は得られなかった。週種類のレーザーを用い波長依存性も調べたが、定性的に同じ測定結果が得られた。今後同じ測定を継続するよりも、別の測定手法を新たに適用する必要があると考えている。
本研究と関連して、液体酸素の90Tまでの磁場領域における論文を執筆しarXivに投稿した[arXiv:1906.01207]。ここでは相転移の前駆現象と思われる信号が得られているため、少なくとも音波測定は相転移に敏感であると言える。多少研究計画は変更されるが、今後は目的を同じくして、音波測定の観点から研究を進めることを検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた光学測定は完了することができたが、残念ながら期待していた相転移は観測することができなかった。音波測定の観点からはたしかに相転移の兆候が見えているので、おそらく光物性では相転移を敏感に検出できないものと思われる。

今後の研究の推進方策

液体酸素の超強磁場光学測定はいったん休止し、超音波測定の開発に取り組む。100テスラ超の領域における超音波測定は過去に例がないが、連続励起法(CW法)を用いた開発にすでに申請者は着手しており、1年以内に測定まで漕ぎ着ける可能性は高い。100テスラ以上まで超音波測定が可能になれば、arXivに投稿した論文[arXiv:1906.01207]と組み合わせた執筆が可能になり、一貫したストーリーでの論文を出版できる可能性が高い。

次年度使用額が生じた理由

0.1%使用額に誤差が生じたが、不要・不急な物品購入を避け、来年度の物品購入のため有意義に用いる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] High magnetic field x-ray diffraction study of the α phase of solid oxygen: Absence of giant magnetostriction2019

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Yasuhiro H.、Shimizu Ayumi、Ikeda Akihiko、Nomura Toshihiro、Yajima Takeshi、Inami Toshiya、Takahashi Kohki、Kobayashi Tatsuo C.
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 100 ページ: 214105~214105

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevB.100.214105

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Viscosity measurements in pulsed magnetic fields by using a quartz-crystal microbalance2019

    • 著者名/発表者名
      Nomura T.、Zherlitsyn S.、Kohama Y.、Wosnitza J.
    • 雑誌名

      Review of Scientific Instruments

      巻: 90 ページ: 065101~065101

    • DOI

      https://doi.org/10.1063/1.5098451

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 固体および液体酸素の超強磁場誘起相転移2019

    • 著者名/発表者名
      野村肇宏
    • 学会等名
      日本物理学会北海道支部講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 液体酸素の磁場誘起液体-液体相転移の可能性2019

    • 著者名/発表者名
      野村肇宏、松田康弘、嶽山正二郎、小林達生、S. Zherlitsyn
    • 学会等名
      液体の化学 夏の学校
  • [学会発表] 破壊型超強磁場中における超音波測定技術の開発2019

    • 著者名/発表者名
      野村肇宏、小濱芳允、松田康弘、A. Hauspurg,D. Gorbunov,A. Miyata, S. Zherlitsyn
    • 学会等名
      強磁場コラボラトリ
  • [備考] 野村肇宏 個人HP

    • URL

      https://ykohama.issp.u-tokyo.ac.jp/tnomura/tnomura

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公開日: 2021-01-27  

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