本研究では液体酸素の磁場誘起液体ー液体相転移を200T級の領域まで探索した。液体ー液体相転移に関して、圧力下での研究はこれまでに多数報告されているものの、磁場を用いた研究はこれまでに存在しなかった。磁場誘起の液体ー液体相転移が発見されれば、液体という複雑系の理解に大きく貢献することが期待される。 初年度で、当初の予定であった光学測定では相転移の検出ができなかったため、本年度は超音波測定およびFBGを用いた磁歪測定(磁気体積膨張効果測定)を行った。これらの測定は、液体試料に適用するための技術開発から行う必要があったものの、比較的短期間で実施することができた。超音波音速測定の結果は90Tまで音速が減少することがわかっていたが、150Tまで音速が単調減少することが明らかになった。150Tにおいて音速は20%近く減少しており、分子間の相関が大きく揺らいでいることを示唆している。磁歪測定の結果は7Tまで体積が膨張することが知られていたが、この膨張が130Tまで単調に続くことが明らかになった。130Tの磁場印加によって、体積はおよそ10%増加した。これは酸素分子間の交換歪みから理解でき、酸素分子間の反強磁性的な相関が抑制されていることを示唆している。また急激な体積膨張により、試料セル内の圧力増大が起きていることも明らかになった。 以上の結果は150T級の磁場でもなお液体酸素の液体ー液体相転移磁場に足りないことを示唆している。今後、更なる強磁場領域における測定が望まれる。
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