研究課題
成果内容:本年度の前半においては非平衡グリーン関数法のうちGeneralized Kadanoff-Baym Ansatzと呼ばれる手法を用いて、半導体の強励起ダイナミクスを解析した。これにより、非平衡励起子相の出現とその寿命や光学応答を明らかにした。また、後半においては、励起子絶縁相の候補であるTa2NiSe5(TNS)に注目し、理論と実験からその集団励起モードの性質を明らかにした。理論解析では、線形応答領域に注目し、グリーン関数法を用いることで、電子格子相互作用の位相モードや振幅モードへの影響を明らかにした。これにより、系のパラメータへの集団励起モードの依存性を明らかにした。ケンブリッジ大学との実験と理論の共同研究では、時間空間分解ポンププローブ実験を行い、系の位相モードが高速で伝搬するシグナルとして捉えられることを明らかにし、TNSが励起子絶縁体であることを示唆する結果を得た。意義と重要性:前半の研究は非平衡グリーン関数法の開発と新規物性の探索という点で意義がある。また、最近では東大の島の研究室で光により駆動されるコヒーレントな状態が観測され、実際の実験とも関連した研究になり、今後の発展が注目される。また、後半の理論と実験の研究においては、簡単な模型であるが、励起子相と集団励起の関係を明らかにし、その結果を実験を通して実際の物質TNSの性質とも関連づけられた。このことは、当該分野で注目されるTNSの物性に新しい観点を与えた意味で意義がある。
2: おおむね順調に進展している
非平衡グリーン関数法のうちGeneralized Kadanoff-Baym Ansatz(GKBA)を用いて、基本模型の解析を行い、実験とも関連する結果を得たことにより、今後GKBAをさらに発展させる上で重要な知見となっている。また、励起子絶縁における集団励起の性質の解明は、今後非平衡状態でのその影響を明らかにする上で有用である。また、実験グループとの共同研究を行なったことで、今後実験と理論のより密な研究が行われることも期待できる。
現在は、非平衡グリーン関数の相補的な手法として厳密対角化やiTEBDなどの波動関数に基づいた手法の実装にも着手しており、これによりより正確に揺らぎの効果の影響を取り入れることが可能である。これらの手法は一次元に限られるがグリーン関数法を開発する上での比較対象として有用である。厳密対角化やiTEBDを用いて、励起子絶縁相における揺らぎの非平衡ダイナミクスへの影響を調べつつ、グリーン関数法の開発を進める。また、これらの手法によって高次高調波の研究も行い相関効果の影響を明らかにする。
研究遂行にあたり、必要な計算資源の獲得および国外の共同研究者との議論に必要な旅費等が発生するため。また、初年度の研究成果の発表のための学会費と旅費も必要である。さらに初年度の研究を通して、必要な書籍が明らかになったので購入する予定である。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Phys. Rev. B
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