研究課題/領域番号 |
19K23427
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 康寛 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (50541801)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 光照射 / 円偏光 / 励起子絶縁体 / スピン軌道相互作用 |
研究実績の概要 |
物質の秩序が光で増強されたり、生成されるといった新しい現象について理論研究を行った。具体的には、時間依存シュレディンガー方程式やフロケ理論などの非平衡系の理論を用いた以下の研究に取り組んだ。 (1)励起子絶縁体における光誘起秩序増大について、これまでの研究をさらに進展させた。二軌道ハバードモデルに対する平均場近似や厳密対角化法を用いた時間発展計算により、以前の我々の研究[Phys. Rev. B, 97 115105 (2018)]で得られた秩序増大をさらに詳細に調べ、未解明だった秩序増大の機構を明らかにした。特に、電子のトランスファー積分がゼロの極限(原子極限)を考え、そのダイナミクスがラビ振動でよく記述できることを示した。そして、原子極限でない場合でもその描像が成り立つことを数値計算により明らかにした。この結果について、励起子絶縁体の候補物質であるTa2NiSe5との関連を議論した。 (2)スピン軌道相互作用を持つ電子系に対し、円偏光照射を行うことで生じるスピン偏極について計算した。ここでは正方格子上でラシュバ型のスピン軌道相互作用を持つ電子系を考え、光照射下でのスピン偏極の時間発展を求めた。また、フロケ理論による非平衡定常状態の計算も行った。光電場の強度、周波数、電子密度を系統的に変化させてスピン偏極を詳細に調べた結果、系がもつバンド構造やフェルミ面が、スピン偏極の向きや大きさを決めるうえで本質的に重要であることを明らかにした。この結果について、現在知られている半導体での観測可能性を議論した。 これらの成果について、現在論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、研究当初の目的であった励起子絶縁体の光誘起秩序増大のメカニズム解明について、一定の成果が得られたことが挙げられる。さらに、スピン軌道相互作用を持つ電子系におけるスピン偏極についても、最初の成果をまとめ論文投稿まで進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は3つの研究計画のうちまだ研究に着手していない課題について重点的に取り組む。具体的には、近藤格子モデルにおける光誘起秩序について、時間依存シュレディンガー方程式を用いた解析を行う。特に、三角格子構造を持つ系で、光照射によって特異なスピン構造が現れるかどうか明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の拡大により参加を予定していた学会が中止、またはウェブ開催になり、旅費の支出が少なくなったことが主な理由である。次年度は、オンラインによる研究環境の整備や新たな計算機の購入、また成果発表に用いるノートパソコンなどの購入を計画している。
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