研究課題/領域番号 |
19K23428
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
小林 和也 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (00849474)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 粉粒体 / 物理ゲル / 重力不安定性現象 |
研究実績の概要 |
本研究では,いまだ未解明な部分の多い粉体系において,特に重力不安定性現象に着目している.この重力不安定性現象は,液体系においては様々な調査が行われているが,粉体系においてはあまり多くはない.そこで本研究では,粉体系と同じようにパーコレートした系であり、加熱や冷却によって固体状態(ゲル)と液体状態(ゾル)に可逆的に転移することができる物理ゲルの性質に着目し,特に両者のパターンの類似性から,粉体系の重力不安定化ダイナミクスを明らかにすることを目的としている. 本年度における研究実績として,粉体系では,これまでの実験結果の解析を通して,粉体を実験セルに充填するときの粉体の詰まり具合(充填率)に着目した.そして,この充填率が変化した際に,重力不安定化ダイナミクスにどのような影響があるかについて詳細に調査を行なった.調査に当たっては,これまでの実験セットアップを一部改善することによって粉体の充填率を制御することを可能にした.さらに,ゲル系における重力不安定性現象についても,前年度に引き続き,加熱温度や上下の組み合わせ(上下の粘性や密度差の制御)など,条件を系統的に変化させた実験を継続的に行い,波長や指状パターン等のパラメータの時間変化について,さらに多くの定量的データを得ることに成功した. 特に,充填率を変化させた際の粉体系の実験結果(波長等のパラメータの時間変化)が,ゲル系の結果と一致することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの実験データの解析により,粉体系の重力不安定性現象では,充填率が重要な役割を果たしていることが明らかになった.そこで,実験セットアップを改良することによって,粉体系の充填率を制御した実験を行うことを可能にした.この実験装置によって,粉体系における新しい実験データを取得することに成功した.この充填率を変化させた際のダイナミクスの変化は,ゲル系においては加熱温度を変化させた際の変化に類似していることから,粉体の充填率制御は両者の共通性を明らかにするために重要な因子であることが明らかになった.本年度はさらに,ここまでの研究成果をまとめた論文を投稿し,査読を経て掲載された.これらの状況を踏まえて,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2020年度までであったが,新型コロナウイルス等の影響により,学会等における研究成果報告が計画通りにできていなかったことを踏まえて,2021年度への継続申請を行なった.今後は,さらなる研究の進展を目指し,これまで得られた成果を元に,詳細な解析によってゲル系および気体粉体の重力不安定性のメカニズム解明への手がかりが得られると考えており、そこからスケーリング則を導出することを計画している.最終年度となるため,得られた研究成果をまとめると同時に,昨年度に不足していた学会への参加,および論文(オープンジャーナルを予定)の執筆を計画している. これらの成果および今後の予定は,本研究課題と併行して進行中の若手研究における研究課題とも相補関係にあるため,継続申請によって高い相乗効果が得られると確信している.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルスの全国的拡大によって,多くの学会がオンラインとなってしまったことから,旅費として計上していた予算の執行が思うようにかなわなかった.さらに所属機関の移動に伴う本予算の移動手続き等によって,予算執行が一時停止してしまった.このことを踏まえ,2021年度への継続申請を行なった.一方で,研究はおおむね順調に進展しており,継続申請によって,当初の計画以上の発展を見込んでいる. 次年度では2021年度からの新規所属機関にて本研究課題の活動に取り組む.経費の使用計画としては,実験サンプルや器具等の購入のほか,スケーリング則の導出に向けた実験結果の解析に使用するソフトウェアの購入,学会発表および論文投稿料(オープンアクセスを予定)に使用する予定である.
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