研究課題
本研究の目的は放射光X線を用いた時間分解磁気光学効果測定により元素選択的に光誘起の磁性ダイナミクスを観察し、強磁性体内部における異なる磁性サイトの相互作用を明らかにすることである。その目的のために、放射光X線のエネルギー可変性を生かして、元素吸収端を用いた元素選択的な測定手法開発および磁性体薄膜への適用を行うことを目的としている。特に我々は強い垂直磁気異方性を持ち記録媒体などへの応用も期待される3d金属とPtの強磁性体薄膜に着目して実験を行っている。今年度、我々の開発したX線共鳴磁気光学カー効果をもちいて、兵庫県にあるX線自由電子レーザー施設SACLAを用いた時間分解測定による光誘起磁気ダイナミクスの測定を行った。また、最初の実験例としての成果を論文に発表するなどした。さらにこれに加えて、金属合金強磁性体に対して、レーザーを照射したときの元素別の応答を、レーザー強度を系統的に変化させて測定を行った。元素に依存した光誘起状態での磁性のふるまいは特異な磁性現象の発現に寄与する現象が知られており、今年度見出した、励起レーザーの強度依存性はこういった現象の発現機構に関連している可能性がある。すなわち、見出した元素依存した光誘起状態のふるまいが、通常の熱励起と異なったメカニズムで発言していることが示唆される。それぞれの元素でのレーザー依存性の違いに関するデータについては、学会発表を行っている。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にあるようにX線自由電子レーザー施設での測定を進め、それぞれの元素でのレーザー依存性の違いについて予備的なデータが得られており、学会発表などを行っていることから判断した。
励起レーザー強度依存性についての予備的なデータをもとに、より詳細なデータの取得を行うとともに、発見した依存性がほかの磁性元素からなる強磁性合金でも普遍的に見えるかを検討する。
学会等中止により旅費を想定より使用しなかったため。また購入予定の物品について次年度使用することにし、令和2年度に発注を予定している。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Applied Physics Letters
巻: 116 ページ: 172406~172406
10.1063/5.0005393