研究課題
本研究課題は、放射性元素であるラジウム (Ra) が、環境中の重要なホスト相である粘土鉱物に吸着する際のミクロな構造を、実験とシミュレーションの両方から明らかにすることを目的としている。粘土鉱物への吸着反応においては、吸着時の水和状態が環境挙動に大きな影響を与えることから、水和状態の解明と吸着状態との比較も目的とした。実験については、X線吸収微細構造 (XAFS) 法によるRaの分析を行った。Raが放射性元素であるため、関連法令に則って許認可の取得や密封線源の作成を行い、SPring-8 BL22XUにて測定を実施した。その結果、水和Raの配位数や距離を明らかにした。また、Raが特定の粘土鉱物に吸着する際、脱水した構造である、内圏錯体を形成することがわかった。一方、シミュレーションについては、水和構造及び粘土鉱物への吸着構造について第一原理計算を実施した。水和構造については、アナログ元素であるバリウムについても計算を実施し、EXAFSとの比較結果を国際学術誌にて報告した。Raのシミュレーションの結果をXAFS法の結果と比較したところ、両者は整合的であり、シミュレーションの妥当性が確認された。シミュレーションの結果から、Raの周辺構造について、より詳細な特性を解明することができた。イオンの水和構造は多くの反応の基礎となるため、水和構造の解明は様々な分野において重要である。また、粘土鉱物に内圏錯体を形成することは、Raが粘土鉱物に固定されることを示唆しており、Raの除去手法開発等に資する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
放射化学
巻: 45 ページ: 28~30
Chemical Physics Letters
巻: 780 ページ: 138945~138945
10.1016/j.cplett.2021.138945