本研究は重力崩壊型超新星爆発のための一般相対論的ボルツマン輻射流体コードを開発し、そこからの重力波・ニュートリノ放射を計算することが目的だった。令和1年度においてはボルツマン輻射輸送モジュールを一般相対論化し、真空中での球対称輻射輸送問題におけるテストを行った。一方、令和2年度においてはこれを多次元に拡張した問題と、物質中での輸送問題をテストした。球対称問題においては曲がった時空の影響を運動量の向きの変化として確認したが、多次元問題では実際に光線が湾曲する様子を確認した。また、超新星を模した状況では物質との反応も正しく取り入れられていることを確認した。以上の結果をまとめ、Astrophysical Journal誌に論文として発表した。一方、流体モジュールの一般相対論化を進めるにあたり、令和1年度の定式化では数値不安定性が発達することが判明したため、令和2年度では数値不安定性を抑える方法を複数検討し、より高精度なコードを開発した。その結果数値不安定性が実際に抑えられていることを確認した。 さらに、令和1年度において行っていた比較用非一般相対論的計算も令和2年度において継続している。令和1年度で投稿していた論文を査読対応の後にAstrophysical Journal誌において出版した。また、計算中のモデルも即時対流後のあとの時間発展まで計算が進み、ニュートリノ同士の相互作用によって非常に特異な現象が起こる可能性を発見した。これは一般相対論的重力によっても大きな影響を受ける可能性があり、今後の一般相対論的計算と比較するモチベーションの一つになる。
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