研究課題
Th-229mはTh-229原子核の第一励起準位であり,8 eV程度という非常に低い励起エネルギーを持つ.基底状態のTh-229をレーザーによってTh-229mへ励起できれば,超高精密な原子核時計を作製できると期待される.レーザー励起を実現するためには,0.1 eV程度の精度でTh-229mの励起エネルギーを決定すること,Th-229mのγ線放出の半減期を決定することが必要であり、そのためにはTh-229mのγ線を直接観測することが重要である。本研究では、Ac-229やPa-229を介してTh-229mの化学状態を適切に制御することで、Th-229mの内部転換を抑制し、γ線を世界で初めて観測することを目指す。2020年度は、理化学研究所のAVFサイクロトロンを利用して、Th-232(p,4n)Pa-229反応によってPa-229を製造した。イオン交換法によりPa-229をTh-232ターゲットや様々な副生成物から分離する試験を行い、Pa-229を90%程度という高い効率で分離することに成功した。Pa-229溶液をCaF2結晶に滴下し、アニールすることによってCaF2結晶へのPa-229のドープを試みた。そして、2019年度に開発した真空紫外光測定装置を用いてPa-229/CaF2試料の光子測定を実施した。151 nmと (Th-229mの波長に対応)と171 nmのバンドパスフィルターを通した時の光子計数率を比較したところ、両者に明確な差がみられず、Th-229mのγ線を観測することができなかった。この原因は、Pa-229がCaF2結晶の内部へと十分に侵入せず、F-イオンと適切に配位していないためであると考えらえれる。今後は、Pa-229をイオン化・加速し、CaF2結晶内部へPa-229を打ち込んだ後にアニールすることで、CaF2結晶へのPa-229の適切な導入を試みたい。
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