研究実績の概要 |
トッテン氷河は、近年氷厚が減少していることが知られている。継続的な棚氷厚の減少が続けば、氷河流動が加速し、海面上昇へ大きく寄与しうる。本研究では、海洋数値モデルMITgcmを用いて、東南極に位置するトッテン棚氷への温かい水塊(mCDW)の流入、トッテン棚氷からの氷河融解水の流出などに着目したモデル開発を行った。NASA ジェット推進研究所によって進められているデータ同化プロダクト(Estimating the Circulation and Climate of the Ocean (ECCO))を境界条件として利用することで、領域モデルまたは全球海洋モデルと比べて、観測データの再現性が格段に高いことがこの研究の大きな特徴である。モデルの解像度は、水平方向約4 km、 鉛直方向には50層である。 トッテン棚氷域の海洋モデル開発は行われてきたが(e.g., Gwyther et al., 2014, Gwyther et al., 2018, Silvano et al,, 2019)、本研究では特に、トッテン棚氷の融解量の時間変動を人工衛星からの見積もりと整合的な結果を示したことが、非常に大きな成果である。さらに、トッテン棚氷融解量の経年変動がモデル領域に存在する沖合に東向きに流れるAntarctic Circumpolar Current (ACC)の変動によって強く影響を受けることを初めて示唆した。コロナ禍の影響によるものか不明であるが、論文査読のプロセスが遅延しているものの、本研究の成果としてあげた論文に加え、さらに2本の論文(主著者1, 共著1)もEnvironmental Earth & Environment誌、Science Advance誌で査読中である。
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