研究課題
鳥類が多様化した一因に,独自の繁殖方法の獲得が挙げられる.しかしながら,初期鳥類の繁殖に関する研究は乏しく、初期鳥類の繁殖戦略は未解決課題である.そこで本研究では,「初期鳥類の繁殖戦略はどのように変遷したか」を問うため,繁殖戦略の指標の一つとなる化石鳥類の卵の形状とサイズの推定に取り組んでいる.卵の形状の進化史推定に関して,令和元年度の約半年間は,卵化石標本を中心にデータ収集を行った.形状の変遷を考察するため,①鳥類に近縁な非鳥類型獣脚類および②原始鳥類の卵形状の比較を行った,①に関しては,兵庫県丹波市から産出した非鳥類型獣脚類恐竜の卵化石を記載・分類した.本標本は鳥類直前の系統と考えられるが,初期鳥類の卵と比較しても非常に細長い形状であることが確認された.本研究は現在,論文を投稿中である.②に関して,アルゼンチンの白亜紀後期の地層から産出したエナンティオルニス類鳥類の卵化石を分析した.マイクロCTスキャンを用いて撮像し,現在,解析を行っている.卵のサイズの進化史推定に関して,令和元年度の約半年間は,初期鳥類の卵サイズの推定を行った.親の分類群が同定された卵化石はほとんどないため,骨格化石から卵サイズを推定する手法を現在改良中である.予察的な分析の結果,新鳥類以前の初期鳥類は,体サイズの割に小さな卵を産んでいた可能性が示唆された.今後慎重に結果を考察していく必要がある.本研究により,鳥類卵の形状やサイズが獲得されたタイミングが明らかになると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
令和元年度は,主として卵化石標本の分析に取り組んだ.成果の一部は,国際学術雑誌に投稿中である.現在進めている課題は,今後さらなるデータの解析が必要であるものの,良好な成果が得られつつある.
次年度の研究推進方策は以下の二つである.(1)卵の形状の進化史に関して,これまでに分析を行った卵化石標本を現生鳥類の卵と比較し,系統樹上でその変遷を考察する.(2)骨格化石から卵サイズを推定する手法を確立し,鳥類進化における卵サイズの変遷を考察する.これらを遂行するため,標本調査を続けるほか,得られたデータの解析及び考察を順次進めていく予定である.
新型コロナウィルスのため、予定していた出張(海外2件、国内2件)が中止となった。そのため、中止となった出張を次年度改めて行う。出張に合わせ、計測・分析機器の購入も計画している。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)