研究課題/領域番号 |
19K23453
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田中 康平 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50841970)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 獣脚類 / 鳥類 / エナンティオルニス類 / 繁殖 / 卵 / 化石 / 中生代 |
研究実績の概要 |
鳥類が多様化した一因に,独自の繁殖方法の獲得が挙げられる.しかしながら,鳥類の基盤的な系統では繁殖に関する研究や知見が極めて乏しく,初期鳥類の繁殖戦略は未解決課題である.そこで本研究では,「初期鳥類の繁殖戦略はどのように変遷したか」を問うため,卵化石の形状とサイズに着目し,その進化変遷の復元に取り組んでいる.ただし,令和2年度は海外渡航が出来なかったため,研究内容・計画を修正し,国内標本の調査や既にあるデータの解析を中心に研究を進めた. 卵の形状の進化史推定に関して,①鳥類に極めて近縁な獣脚類恐竜の卵化石及び②初期鳥類の卵化石の調査を行った.①に関して,兵庫県丹波市に分布する大山下層(前期白亜紀)から産出した卵化石を記載・分類し,形状を分析した.系統解析の結果,本標本は非鳥類型獣脚類に属すると考えられる.鳥類直前の系統にも関わらず,極めて細長い卵という,非鳥類型獣脚類卵に典型的な形質を保持していることが分かった.②で研究中のエナンティオルニス類鳥類(白亜紀の初期鳥類)の卵化石が丸みを帯びていることから,卵形状の変化は鳥類出現時かそれ以降に起こった可能性が高い.なお,①の研究は国内初の巣化石の発見及び世界最小の非鳥類型恐竜類の卵化石の発見として国際誌に論文が掲載された. 卵サイズの進化史推定に関して,令和2年度は現生種骨格を用いたデータ分析を中心に行った.親の分類群が特定された卵化石はほとんどないため,骨盤形態が卵サイズの指標となり得る.現在,骨盤と卵サイズの相関関係から卵サイズを推定する手法開発を継続的に行っている.初期鳥類において,繁殖戦略と関連すると言われる卵の形状やサイズを推定し,変化のタイミングを明らかにすることで,鳥類型繁殖方法の進化史理解につなげる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は研究内容・計画に修正が求められたが,研究成果を国際学術雑誌に発表することができたため,おおむね順調に進展していると考えている.特に兵庫県産の卵化石は鳥類への繁殖方法の変遷を探る上で重要な発見となった.現在進めている課題は,さらなる標本の分析及びデータの解析・解釈が必要であるものの,概ね良好な成果が得られつつある.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究推進方策は以下の二つである. (1)初期鳥類やその直前の系統の卵化石の記載・分類,およびその形状やサイズの分析をさらに進めること.さらにそれらの標本を現生鳥類の卵と比較し,系統樹上で形質の変遷を考察する. (2)骨格化石から卵サイズを推定する手法を初期鳥類や鳥類に近縁な獣脚類恐竜に適用し,卵サイズの進化変遷を考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによって海外出張ができなくなり,研究内容・計画に修正が生じた.そのため,研究を1年延長し,2021年度も継続して研究を行うこととした(研究課題の延長は承認済みである).2021年度は分析機器や消耗品の購入,国内出張旅費,学会参加費用,オープンアクセスの論文投稿費用等の支出を見越している.
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