鳥類は現在,最も繁栄し,多様化している陸上脊椎動物の一群である.卵を産み,育てるという繁殖方法は鳥類で一貫しており,かれらの繁殖スタイルは他の脊椎動物と一線を画している.このような鳥類独自の繁殖方法はいつ,どのように獲得されてきたのか.本研究では,「初期鳥類の繁殖戦略はどのように変遷したか」を探るため,初期鳥類の卵化石のサイズや形状に着目し,その変化を追求している.採択期間中は海外渡航や出張調査に制限があったため,研究内容・計画を修正して調査を進めた. 卵の形状がどのように変遷したのかについては,初期鳥類とその前後の分類群の卵化石を探ることで調査が完了している.鳥類に近縁な非鳥類型獣脚類恐竜及び中生代鳥類の卵化石の形状を比較したところ,前者では極めて細長い卵であり,後者ではやや長い卵となることが分かった.特に兵庫県丹波市から発見された非鳥類型獣脚類の卵化石は内部構造が鳥類に似ているにもかかわらず,極めて細長い形状であることが分かった.また,現生鳥類ではさらに丸みのある卵を産むため,卵の形状変化は鳥類に至ってから,特に,オルニトゥラエ類と呼ばれる進化型の鳥類以降であると考えられる.これは,骨盤形態の変化とも整合的である.本研究の成果は,既に論文がまとめられている. 卵サイズの進化史の復元に関しては,現生種でデータ収集を行い,骨盤の幅と卵サイズに相関関係があることを見出した.これにより,卵が見つかっていない化石種でも骨盤の幅から卵サイズの推定が可能となる.この相関関係に基づいて,初期鳥類の骨格データから卵サイズの推定を行った.また,相対的な卵サイズがどのように変遷していったのかを考察している.
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