研究課題
地球内部においてFeの大半は金属鉄である中心核として存在しているが、マントル鉱物の結晶構造中にも取り込まれ存在している。結晶構造中に取り込まれたFeは、結晶構造中の位置(席)・価数・スピン状態によってそれぞれ異なった影響を物性に与える。地球下部マントルにはブリッジマナイトとペリクレースという鉱物が存在しているが、特にブリッジマナイトの高温高圧下におけるFeの状態は未解明なため、定量的な物性への影響は明らかになっていない。本研究の目的は、高温高圧下におけるブリッジマナイト中のFeの状態を決定し、物性にどのような影響を与え、下部マントルにはどのような影響を及ぼすか定量的に議論することである。本研究では、X線吸収微細構造とX線回折の複合測定による新たなFe状態決定法を提案し、マントル鉱物中の高温高圧下におけるFeの状態の解明を行う。その手始めに先行研究で高圧下のスピン転移圧力やFeの価数が明らかになっているフェロペリクレースやε-FeOOHに対して、X線吸収微細構造とX線回折の複合測定を行う。2019年度は、実験に必要な高圧発生装置であるダイヤモンドアンビルセルなどの設計を業者と打ち合わせを行い、購入を行った。また、実験を実施するにあたり、SPring-8に課題申請を行い、採択された。2020年度に実験を実施する予定である。また、実験試料であるフェロペリクレースを愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターに設置されている高温雰囲気調整炉を用いて合成を行った。
2: おおむね順調に進展している
本課題が採択されたのが8月であり、2019年度のSPring-8課題申請に間に合わず、2019年度に実験することは叶わなかったが、高圧実験装置であるダイヤモンドアンビルセルの購入や実験試料の合成を行った。幸い2020年度のSPring-8課題に採択され、実験を遂行することが可能である。2020年度にX線吸収微細構造とX線回折の複合測定をフェロペリクレースやε-FeOOHに対して行うことで、本研究の目的の鉱物であるブリッジマナイトを解析する際の基礎的なデータを取得することが可能であると思われる。
2019年度は、室温におけるX線吸収微細構造とX線回折の複合測定を行う準備を行ってきた。2020年度には、SPring-8の課題が採択されたことから、実験を遂行することができる。しかしながら、新型コロナウイルスの影響でSPring-8が外部利用者の受け入れを中止しており、6月下旬に予定していたビームタイムは一旦キャンセルされた。感染者の爆発的増加は今後も予測されており、県外への出張はもちろんSPring-8での実験ができないことが予測される。このようなことが予測される中、2020年度は大学内で高温発生可能な技術の開発を行う予定である。また、SPring-8の課題公募が行われない可能性もあるため、2020年度は当初の実験計画より遅れることが予測される。
購入を予定した物品が予算残高では足りないことが判明したため、次年度に繰越した。次年度の予算と合わせ物品を購入する予定である。次年度での使用計画としては、昨年度購入する予定であったダイヤモンドアンビルセルの追加購入と高温を発生させるための直流安定化電源や実験を予定しているSPring-8への旅費やSPring-8の消耗品代や実験関係の消耗品を購入する予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: 298 ページ: 106348~106348
https://doi.org/10.1016/j.pepi.2019.106348
High Pressure Research
巻: 40 ページ: 130~139
https://doi.org/10.1080/08957959.2019.1702175