研究課題/領域番号 |
19K23457
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柿澤 翔 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (10846819)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | ダイヤモンドアンビルセル / 高温高圧 / X線吸収微細構造 / 放射線X線回折 / 鉄 / スピン転移 |
研究実績の概要 |
地球内部においてFeの大半は金属鉄である中心核として存在しているが、マントル鉱物の結晶構造中にも取り込まれ損ざしている。結晶構造中に取り込まれたFeは結晶構造中の位置・価数・スピン状態によってそれぞれ異なった影響を物性に与える。下部マントルに存在していると考えられているブリッジマナイト中の鉄の状態は非常に複雑であり、未解明である。しかしながら、高温高圧下におけるFeの状態決定の手法は未確立である。本研究では、X線吸収微細構造(XAFS)とX線回折(XRD)の複合測定による新たなFe状態決定法を提案し、マントル鉱物中の高温高圧下におけるFeの状態の解明を行う。 2020年度では、実験試料であるフェロペリクレースとε-FeOOHの合成を行った。高温雰囲気炉を用いて還元的条件で2019年度に合成を行ったフェロペリクレース[(Mg0.8,Fe0.2)O]よりもFe量が多い[(Mg0.7,Fe0.3)O]の合成を行った。また、ε-FeOOHは広島大学設置のマルチアンビル型高圧発生装置を用いて高温高圧条件で合成を行った。2020年度では、これら合成した試料を用いてSPring-8 BL39XUにて高圧下におけるXAFS+XRD実験を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で実験することが実験を遂行することが叶わなかった。しかしながら、予備実験により透過法によるXAFS実験用の高さの小さなダイヤモンドアンビルを使用しても70 GPaの発生が可能なことが明らかになり、本実験は問題なく遂行することが可能であることが確かめられた。また、フェロペリクレースのXAFSのみのデータ取得を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、実験に使用する出発物質の合成し、ダイヤモンドアンビルセルに封入し実験を遂行できる段階まで進んだ。また、予備実験により、本研究の実験手法を用いることで70GPaの圧力発生可能なことやフェロペリクレースの高圧下におけるXAFSデータを取得できた。一方で、新型コロナウイルスの第2波、第3波の直撃を受け、当初は7月に予定していたビームタイムキャンセルになった。そのため、予定していた研究計画とは大きく異なったものとならざるを得なかった。よって、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画では、2020年度までの計画だったが、新型コロナウイルスの影響で実験を遂行することが出来なかった。よって、研究期間の延長を行った。2020年度までに、実験試料の合成、放射光X線によるXAFS+XRD実験のセットアップを終え、実験を遂行できる段階である。新型コロナウイルスの影響で採択されていたビームがキャンセルになったため、再度ビームタイムの確保を行い、実験の遂行を目指す。また、予備実験により得られたフェロペリクレースのXAFS解析を行い、高圧下におけるFe周りの構造解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で予定していた大型放射光施設SPring-8での実験がキャンセルとなり、実験に使用を予定していたビームタイム使用における消耗品負担分、旅費などを研究期間を延長することにより次年度に繰り越した。繰り越した助成金は、次年度における消耗品負担分や旅費などに充てる。
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