研究実績の概要 |
地球内部において鉄の大半は金属鉄である中心核として存在しているが、マントル鉱物の結晶構造中にも取り込まれ存在している。結晶構造中に取り込まれた鉄は結晶構造中の位置・価数・スピン状態によってそれぞれ異なった影響を物性に与える。下部マントルに存在していると考えられているブリッジマナイト中の鉄の状態は非常に複雑であり、未解明である。しかしながら、高温高圧下における鉄の状態決定の手法は未確立である。本研究では、X線吸収微細構造(XAFS)とX線回折(XRD)の複合測定による新たな鉄の状態決定法を提案し、マントル鉱物中の高温高圧下における鉄の状態の解明を行う。 研究期間中では、まず実験試料である鉄を含む鉱物を合成した。高温雰囲気炉を用いて還元的条件で[(Mg0.8,Fe0.2)O], [(Mg0.7,Fe0.3)O]の合成を行った。また、広島大学設置のマルチアンビル型高圧発生装置"MAPLE600"を用いて高温高圧条件でε-FeOOHの合成を行った。これら合成した試料を用いてSPring-8 BL39XUにて高圧下におけるXAFS+XRD実験を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で実験を遂行することが叶わなかった。しかしながら、予備実験により透過法によるXAFS実験用の高さの小さなダイヤモンドアンビルを使用しても70 GPaの発生が可能なことが明らかになり、本実験は問題なく遂行することが可能であることが確かめられた。また、予備実験として高圧条件のフェロペリクレースの吸収スペクトルを取得し、本研究による手法により高圧下の鉄の状態を決定することが可能であることが確かめられた。
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