研究課題/領域番号 |
19K23458
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沢田 輝 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10845100)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | ジルコン / 微量元素 / ウラン鉛年代 / ハフニウム同位体比 / マントル / 地殻 |
研究実績の概要 |
地球は45億年前の誕生時から火成活動が続き、プレート沈み込みと共に大陸地殻生産の起きている太陽系でも特異に活動的な水-岩石惑星である。しかし、地球史初期の火成活動の様式や地殻生産量は未だ議論が続いている。本研究の目的は太古代苦鉄質岩中に含まれるジルコン(ZrSiO4)という副成分鉱物のウラン-鉛年代・ハフニウム同位体比・微量元素組成の3種類の局所分析を通して、地球史初期における地殻-マントルの分化を具体的に制約することである。 本年度は、分析のためのレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析器(LA-ICPMS)の条件設定の探索や、採集済みの試料を中心に約70試料に対して重鉱物分離などを行った。特に、東京大学地殻化学実験施設に設置されているコリジョンリアクションセルを搭載したタンデム四重極型ICPMSによる微量元素組成の分析について、同重体干渉を除去してスカンジウム、チタン、ニオブ、タンタル、レアアース元素などの分析が可能になるように設定を行い、ランタン以外の元素については標準試料ジルコン91500に対して十分名分析が可能となった。ランタンについては標準試料ガラスを用いた評価を試みる必要がある。一方で、実際の試料の分析については、重鉱物分離を行った試料のうち、ジルコンが得られた苦鉄質岩は10試料程度であった。他の試料は花崗岩などである。これらの得られたジルコンに対してウラン鉛年代測定、微量元素組成分析、また、カナダ・アルバータ大学にてウラン鉛年代・ハフニウム同位体比測定を行った他、二次イオン質量分析法による酸素同位体比の分析も合わせて行った。これらの分析結果の一部について論文化を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにLA-ICPMSを中心とした分析機器の調整を進め、実際に試料からジルコンを分離し、分析データを得ることができている。2020年1~2月にはアルバータ大学での分析も実施した。当大学ではレーザーアブレーション装置から2台のICPMSへ分岐接続して使用するスプリットストリームシステムによるハフニウム同位体比とウラン鉛年代の同時測定に関する先進的な設備が整っており、この運用についても多くの知見を得た。これらの研究活動によって得た一部のデータについては、すでに論文化を進めている。一方で、苦鉄質岩には当初予想よりもジルコンが含まれていないことが多く、また火成起源のジルコンではなく熱水起源のジルコンが含まれていることもわかった。ウラン鉛年代やハフニウム同位体比、微量元素組成などのジルコン局所分析データそのものだけでなく、ジルコンの有無や熱水起源ジルコンの存在についても苦鉄質岩の形成過程を考察する上で重要な情報となる。このため、研究計画の一部修正について検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目には海外調査およびカナダ・アルバータ大学での分析を引き続き行う予定であったが、コロナウイルス問題によって実現は極めて難しくなってしまった。また、東京大学からJAMSTECへ異動したので、それに伴って実験設備の一部の再構築等も必要となった。これらへの対策として、既存試料や共同研究者の試料、また異動先の所有する試料などを活用して、研究目的の達成に近づけるように計画を一部修正しながら進めていきたいと考えている。また、野外調査に出かけられなくなった分、新規のデータ取得だけでなく、先行研究で報告されているデータのコンパイルとその統計学的な分析により一掃の力を入れることを考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月にインド・デリーで開催予定だった第36回万国地質学会議に参加し研究発表や野外巡検に伴う太古代岩石試料の採集などを行う予定であったが、新型コロナウイルス問題によって学会が中止となってしまい、年度末にその参加経費が浮いた状態となってしまったため、次年度へ繰越す必要が生じた。
|