Ia型超新星は宇宙論的距離における標準光源として利用されるなど、極めて重要な研究背景を持つ天体である。それにも拘わらず、その親星や爆発メカニズム、多様性の起源といった問題は長年にわたり未解決のままとなっている。本研究課題では、Ia型超新星の親星、爆発モデルに制限を与えることを目的として観測的研究を行っている。特に、爆発直後からのIa型超新星の多バンド観測からIa型超新星の未解決問題に迫る。 主に京都大学3.8mせいめい望遠鏡と広島大学1.5mかなた望遠鏡を用いて、近傍銀河に出現するIa型超新星について可視近赤外線観測を実施した。これによってデータの欠損がなく、精度の良い光度変化を捉えることができた。さらに、光赤外線天文学大学間連携での観測依頼を行い、より多くのバンドでの測光データを取得した。 本年度においては、4例の爆発直後のIa型超新星の可視近赤外線観測に成功し、親星の半径の制限を行えるような良いデータサンプルを得ることができた。また、分光データについても解析を行い、これらのデータに見られる吸収線の青方偏移量を調べた。観測的な特徴から各々のIa型超新星のサブクラスを推定した。本研究課題によって新たに得られたサンプルと、これまでの観測サンプルを合わせて統計的な解析を行い、Ia型超新星内での一部のサブクラスの爆発メカニズムについて議論を行うことができた。これらの成果については現在、論文を投稿中である(Kawabata et al. in prep)。
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