研究課題/領域番号 |
19K23463
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
島尻 芳人 国立天文台, アルマプロジェクト, 特任准教授 (90610551)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | フィラメント形成 / 星形成 / ミリ波 |
研究実績の概要 |
宇宙赤外線望遠鏡ハーシェルによる星形成領域の観測から、0.1pc幅のフィラメント(細長い構造)が至るところで検出され、乱流によりフィラメントが形成、 フィラメントの重力により周辺ガスがフィラメントへ流れ込み、 フィラメント質量が増加し重力不安定が起こり、フィラメントから星のもととなるコアへ分裂 する、といったフィラメント形成シナリオが提唱されている。そのため、フィラメント形成の理解は、星形成 の理解に直結する。本研究では、赤外線観測では 得ることができなかった運動情報を電波観測により得ることで、運動学の観点からフィラメント形成過程を明らかにし、フィラメント形成シナリオの確立を目指 すことを目的としている。初年度の研究では、以下の2点を明らかにした。
(1) 近年の分子輝線観測では、フィラメント幅の多様性が報告され、0.1pcのフィラメント幅の普遍性の有無が議論されてきた。本研究では、NGC2024領域にある フィラメントに対して、連続波と複数の分子輝線の動径方向のプロファイルを比較するところで、各分子輝線が捉えられる密度域はダスト連続波が捉えられる密 度域と比べ狭く、連続波と分子輝線とでは、異なるフィラメント幅を示すことを明らかにした。つまり、フィラメント幅の普遍性を議論するためには、同一のト レーサーを用いた比較が重要であることを明らかにした。 (2) NGC2024領域のフィラメントに対する分子輝線データと分裂中のフィラメントの簡易モデルの速度構造関数の比較等から、観測されたフィラメント中のコアは、重力不安定による分裂によって形成されたことを示した。
2年度目は、上記の結果を投稿論文としてまとめ、Astronomy & Astrophysics (A&A)の査読誌へと投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の結果を投稿論文としてまとめるのに、想定より時間がかかった。現在、論文は投稿し、審査員のコメントに対応している。
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今後の研究の推進方策 |
取得済みの複数の近傍星形成領域に対する分子輝線データに対して、本研究で確立した速度構造関数による解析を行うことで、運動学的・統計的にフィラメントの分裂過程を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、計画していた研究会等がキャンセルになったため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求する助成金と合わせて、国内外の研究会への参加に使用し、本研究成果の宣伝を行う予定である。
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