宇宙赤外線望遠鏡ハーシェルによる星形成領域の観測から、0.1pc幅のフィラメント(細長い構造)が至るところで検出され、乱流によりフィラメントが形成、フィラメントの重力により周辺ガスがフィラメントへ流れ込み、 フィラメント質量が増加し重力不安定が起こり、フィラメントから星のもととなるコアへ分裂する、といったフィラメント形成シナリオが提唱されている。そのため、フィラメント形成の理解は、星形成 の理解に直結する。本研究では、赤外線観測では得ることができなかった運動情報を電波観測により得ることで、運動学の観点からフィラメント形成過程を明らかにし、フィラメント形成シナリオの確立を目指すことを目的としている。初年度の研究では、以下の2点を明らかにした。
(1) 近年の分子輝線観測では、フィラメント幅の多様性が報告され、0.1pcのフィラメント幅の普遍性の有無が議論されてきた。本研究では、NGC2024領域にあるフィラメントに対して、連続波と複数の分子輝線の動径方向のプロファイルを比較するところで、各分子輝線が捉えられる密度域はダスト連続波が捉えられる密度域と比べ狭く、連続波と分子輝線とでは、異なるフィラメント幅を示すことを明らかにした。つまり、フィラメント幅の普遍性を議論するためには、同一のトレーサーを用いた比較が重要であることを明らかにした。 (2) NGC2024領域のフィラメントに対する分子輝線データと分裂中のフィラメントの簡易モデルの速度構造関数の比較等から、観測されたフィラメント中のコアは、重力不安定による分裂によって形成されたことを示した。
上記の結果を投稿論文としてまとめ、Astronomy & Astrophysics (A&A)の査読誌へと投稿し、現在、論文受理に向けて、査読員のコメントに対応するため、論文を修正中である。
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