研究実績の概要 |
本年度は、南部アンデス山脈上空の山岳波が作り出す2次波について観測研究を進めてきた。近年、2次波は高分解能モデルを用いた研究が活発に行われており[Vadas et al., 2018; Vadas and Becker, 2019]、モデル研究とともに観測研究もここ数年で行われ始めている[Vargas et al., 2016; Liu et al., 2019]。研究代表者は、2つの衛星観測(AIRS/Aqua, VIIRS DNB/Suomi Npp)を解析し、アンデス山脈上空の重力波の波長・空間的広がりを調査した。AIRS/Aquaは成層圏(高度~20-50 km)の重力波を、VIIRS DNB/Suomi Nppは、中間圏(高度~87 km)の重力波を捉えることが可能である。2つの衛星がとらえた重力波の発生源を特定するために、再解析データ(MERRA-2)を用いた。 結果1 山岳波及び2次波と考えられる重力波が、ほぼ同時刻で観測されているイベントを2つ発見した。 結果2 上記のイベント期間前後では、地表付近の強い風がアンデス山脈にぶつかっていた。このため、AIRS/Aquaが捉えた成層圏重力波は、山岳波であると考えられる。また、これらの山岳波は上方伝播に伴い振幅が増大し、高度50-70 kmの間で飽和・砕波することがわかった。 結果3 VIIRS DNB/Suomi Nppが捉えた中間圏重力波は、リング状の波面を持ち風下方向に広がって分布していた。これらは、Vadas and Becker [2019]が数値モデルで再現した2次波と同様の特徴である。一方で観測された重力波は、Vadas and Becker [2019]が再現した波より波長が一桁程度短かった。
|