本研究は、古生代後期石炭紀から中生代前期三畳紀(約3.1億年前から約2.0億年前)にかけて大陸から遠く離れた遠洋域の深海平原で堆積した珪質堆積岩の層序記録を復元することを目的とした。2022年度は、北上山地北部に分布するジュラ紀付加体中の遠洋深海堆積岩層のうち、特に石炭紀後期からペルム紀前期の年代に注目して年代の高精度化のために示準化石となるコノドント化石を検出した。コノドント化石は世界中の海成堆積岩類から産出する上に、年代ごとに起きた形態の変化がよく研究されているため、有効な示準化石として用いられている。特に、本研究で対象とする古生代石炭紀から中生代三畳紀に関しては、地質年代を定義するものとしても用いられる重要な示準化石である。石炭紀後期からペルム紀前期に着目した理由は、昨年度までの研究により、この年代には古生代・中生代の深海堆積岩で最も普遍的に見られる、珪質度の極めて高いチャートに代わり、より粘土質な粒子を多く含む堆積岩が産出することがわかったためである。本研究で検出したコノドント化石を、地質年代に関する研究が行われてきた世界の他地域の化石産出記録と対比することで、石炭紀後期からペルム紀前期について、最新の年代の基準に基づいた詳細な深海堆積岩の層序を復元した。また、約5kmしか離れていない2つの地点で復元した層序を比較したところ、粘土質な堆積岩層の年代は両者では一致しておらず、局所的な細粒砕屑物の流入により形成されたことが示唆された。
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