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2019 年度 実施状況報告書

TES型精密X線分光器を用いた「はやぶさ2」帰還試料の微小水和物探査に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K23473
研究機関国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

研究代表者

林 佑  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00846842)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2021-03-31
キーワードTESカロリメータ / STEM / 地球外物質分析 / X線分光器
研究実績の概要

本研究は、地球外物質を用いて太陽系形成過程での有機物と水和物の進化の解明を目的とする。そのために、高分光性能を有する超伝導遷移端型X線マイクロカロリメータ(TESカロリメータ)を地球外物質分析のためのエネルギー分散分光装置(EDS)として用いる。原始太陽系で生成され、惑星に取り込まれることなく星間空間に存在する地球外物質の微細構造中での有機物や水和物の存在量はEDSの定量精度で制限され、10~80%程度の系統誤差がつく。 この状況を打破すべく、申請者は定量分析の精度を一桁以上向上可能なTES-EDSシステムを開発を行なっている。TESカロリメータの有効面積は小さく、開口効率は僅か10%である。地球外物質 の精密定量分析を行うには、有効面積と開口効率の大幅な向上に向けたブレイクスルーが必須である。この実現に向け、本年度は9倍の有効面積と90%の開口効率を持つマッシュルーム型吸収体TESカロリメータの開発を行うべく、最初の段階としてTESカロリメータが無い状態で、マッシュルーム型吸収体の構造形成試験を試みた。従来マッシュルーム型吸収体製作には、蒸着法を用いていたが、蒸着時の熱負荷によりマッシュルーム下層のフォトレジストが変性し、除去するのが困難であった。その改善のため、製作プロセスで熱負荷が小さく済む電析法による変更を検討し、オランダの宇宙機関であるSRONで実際に電析法を用いてマッシュルーム型吸収体の構造形成試験を行い、フォトレジストの除去が可能であることを確認した。この結果を踏まえ次年度以降には、電析法をプロセスに組み込んだマッシュルーム型吸収体TESカロリメータの製作プロセスを確立し、評価を行なっていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

TES-EDSでは、X線集光素子を用いたX線集光を行なっているが、その集光スポットサイズがエネルギー依存性を持つ。そこで、エネルギー依存性を考慮した全く新しいTESカロリメータのデザインを行い、論文としてまとめた。
さらに、従来マッシュルーム型吸収体のプロセスには蒸着法を用いて行なっていたが、蒸着時の熱によって、吸収体下のフォトレジストが変性しフォトレジストを除去することが困難であった。そこで、熱負荷のかからない電析法へのプロセスの変更を検討していた。前年度に欧州の宇宙機関であるSRONへ行き、そこの設備を用いて電析法を用いたマッシュルーム型吸収体の製作をSRONの研究員と共同で行った。その結果、日本では初めてX線吸収体のマッシュルーム構造の形成に成功した。これを受けて、宇宙研での製作プロセスに組み込むために、電析環境の構築を行なっている。

今後の研究の推進方策

本年度は、前年度実現したマッシュルーム型吸収体をTESカロリメータに実際に実装し、マッシュルーム型吸収体TESカロリメータの製作プロセスの確立を行い、実際に64アレイのマッシュルーム型吸収体TESカロリメータを製作・評価を行う。さらに、前年度にデザインした100 eV - 15 keVまでの広いエネルギー帯域で高い感度を有するTESカロリメータにマッシュルーム型吸収体を搭載したものを製作を行う。

次年度使用額が生じた理由

物品費・旅費の使用で端数が生じたが、次年度に必要な物品購入に有効に使用する予定である。
次年度には、マッシュルーム型吸収体成膜用の金とビスマスのメッキ浴や、64ピクセルの読み出し用マイクロ波SQUIDの購入費、および論文投稿のために使用を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] A Concept Design of TES X‐ray Microcalorimeter Array with Different Thickness Absorber Toward the Observation from 50 eV to 15 keV for STEM‐EDS2019

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Hayashi, Haruka Muramatsu, Ryohei Konno, Noriko Y. Yamasaki, Kazuhisa Mitsuda, Akira Takano, Keisuke Maehata and Toru Hara
    • 雑誌名

      Journal of Low Temperature Physics

      巻: 199 ページ: 908 915

    • DOI

      10.1007_s10909-019-02326-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A study of TES X-ray microcalorimeter array with different absorber thickness towards the observation from 50 eV to 15 keV for STEM-EDS2019

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Hayashi
    • 学会等名
      Low Temperature Detectors 18th
    • 国際学会
  • [学会発表] Developments of TES array and the detector stage towards the observation from 100 eV to 15 keV for STEM2019

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Hayashi
    • 学会等名
      The 32nd International Symposium on Superconductivity
    • 国際学会
  • [学会発表] Developments of TES Array towards the Observation from 100 eV to 15 keV for STEM-EDS2019

    • 著者名/発表者名
      Tasuku Hayashi
    • 学会等名
      13th Superconducting SFQ VLSI Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 50 eVから15 keVの特性X線を用いたナノスケール構造中の精密定量分析を目指したTES型X線マイクロカロリメータの開発2019

    • 著者名/発表者名
      林 佑
    • 学会等名
      応用物理学会

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公開日: 2021-01-27  

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