研究課題/領域番号 |
19K23474
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
山本 大貴 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00846868)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | プレソーラー粒子 / 原始太陽系円盤 / 化学反応速度 / 円盤物理化学条件 |
研究実績の概要 |
太陽系誕生以前に形成された特異的な同位体組成を持つ粒子"プレソーラー粒子"の原始太陽系円盤での残存物理化学条件を制約するため、主要プレソーラー粒子であるアルミナ粒子の酸素同位体交換反応、SiC粒子の蒸発反応に注目し実験をおこなってきた。アルミナ粒子に関しては、恒星周囲で存在すると考えられるアルミナ多形粒子 (δアルミナ) を先行研究を基に合成し、原始太陽系円盤の低圧の水蒸気圧環境を再現できる真空加熱装置を用いて合成アルミナ粉末と18Oに濃集した0.3 Pa のH2Oガスとの酸素同位体交換実験をおこなった。加熱後粉末試料は、ペレット化したのち、真空加熱炉で高温で焼結させ、焼結サンプルは北海道大学の二次イオン質量分析装置で酸素同位体組成分析をおこなった。その結果、900度3日程度の加熱で天然の酸素同位体組成に対して30倍程度18Oに濃集していることがわかり、プレソーラーアルミナ粒子が原始太陽系円盤で少なからず酸素同位体をおこした可能性があることがわかった。加熱時間、加熱温度を変えた実験から0.3 PaのH2Oガス中での同位体交換速度の推定をおこなっている。SiC粒子蒸発実験に関しては、原始太陽系円盤を模した低圧の水素・水蒸気混合ガス中での高温加熱条件を達成するため、加熱炉の設計をおこなった。設計は既存の一気圧縦型管状炉を真空仕様に改造する形でおこない、設計に基づき追加部品の作成、追加部品を用いた加熱装置の組み立てまで完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低水蒸気圧環境において、δアルミナ粒子が加熱時間に応じた同位体組成の変化が観察され、プレソーラーアルミナ粒子の原始太陽系円盤での同位体交換速度が今後の追加実験を通して厳密に推定されることが予想される。また、SiC蒸発実験に使用する真空管状炉の設計、装置追加部品の製造、装置組み立てまでが完了しており、今後SiC蒸発実験が順調におこなえることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
δアルミナ粒子と低圧水蒸気との酸素同位体交換の追加実験をおこない、同位体交換速度を推定する。水蒸気圧を変化させた実験もおこない、同位体交換速度の水蒸気圧依存性を推定する。また、δアルミナ以外のアルミナ多形に関しても同様の実験をおこない、結晶構造に依存した同位体交換速度の変化の観察もおこなう。SiC粒子の蒸発実験に関しては、SiC粒子を原始太陽系円盤を模したH2/H2O比 (~1000) の混合ガス中で高温条件で加熱する。加熱後試料の質量変化から蒸発量・蒸発速度を推定する。H2/H2O比を変化させ、蒸発速度のH2/H2O比依存性を推定する。得られたプレソーラーアルミナ粒子・SiC粒子の化学反応時間スケールから、初期太陽系でプレソーラー粒子が消失する条件を推定し、円盤の物理化学条件を制約する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月米国での開催予定の国際学会 (51st Lunar and Planetary Conference) が新型コロナウイルスにより開催されなかったことにより、旅費使用額が減少したため。未使用額は今年度のH218O試薬の購入に充てる。
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