研究課題/領域番号 |
19K23477
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 佑介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90843227)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザ / 干渉計測 / 応力波 / ポンププローブ / 超高速観察 / ガラス / レーザ加工 |
研究実績の概要 |
電子機器や光学機器のさらなる高性能化のために,ガラスへの微細精密加工が求められている.ガラスのようなバンドギャップの広い材料への微細加工手法としてフェムト秒レーザが注目されているものの,クラックが発生するために精密加工が困難であるという課題が存在している.本研究の目的は,フェムト秒レーザ加工時に生じる応力波の引張応力成分を打ち消すことにより,加工時に生じるクラックを抑制し,ガラスの微細精密加工を実現することである. 引張応力のキャンセリング実現のためには,応力分布の時間変化を正確に推定する必要がある.フェムト秒レーザ加工時に生じる応力波は固体中の音速で伝搬するため,それに伴い応力分布も超高速で変化する.そのような超高速現象を写し出すために,時間分解(ポンプ・プローブ)撮影法を採用し,加工中に伝搬する応力波を鮮明に映し出した.またフェムト秒レーザ加工時には多数のパルスを照射するため,多数パルスが引き起こす現象を撮影可能な光学系を構築した. さらに,そこにマッハツェンダー干渉計を組み込むことで,応力波が作り出す材料内部の密度変化の分布を,プローブ光の位相のずれの分布として抽出した.密度分布は2次元画像として抽出されるが,実際の現象は3次元である.そのため,2次元画像から3次元分布を幾何学的に再構築する方法を検討した.また,密度分布を圧力分布に変換することは可能であるが,固体中の応力を推定するための手法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェムト秒レーザ加工中の材料内部で生じる高速現象を観察するために,高速度カメラとポンプ・プローブ法を組み合わせた観察系を構築した.この観察系により超高速で伝搬する応力波の挙動を写し出すことに成功した.さらに,プローブ光を分岐し,マッハツェンダー干渉計を構築することで,干渉画像の撮影に成功した.材料内部の密度変化が原因となってプローブ光に位相のずれが生じることで干渉画像が撮影される.そのため,干渉画像を解析することによって材料内部の密度変化の分布を抽出することができる.解析コードを構築することにより,密度変化分布の抽出に成功した.しかし,抽出される画像は2次元であるため,実際に生じている3次元分布をそのまま単純に得ることはできない.そこで,3次元情報を再構築する手法を検討し,開発に着手した.また,密度分布から応力分布を推定するためには,「方向」の情報が必要となるため,応力推定のためのシミュレーションの構築を開始した.
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今後の研究の推進方策 |
今後,2次元画像からの3次元分布抽出手法の有効性を,シミュレーション結果と照らし合わせることで評価する.シミュレーションのモデル形状は,加工中の観察画像に基づいて構築し,弾性体を仮定して計算する.3次元分布抽出手法の有効性が示されれば,応力分布の時間変化の正確な追従が可能となる.フェムト秒レーザ加工において存在するパラメータ(パルス数,パルスエネルギー,パルス幅,波長,ガラス材料など)が応力分布に与える影響を,詳細に遅延時間を振って明らかにすることによって,第一パルスで生じた引張応力を適切に相殺可能な第二パルス照射条件を明らかにする.明らかとなった第一パルスと第二パルスの関係をもとに実験を行うことで,ガラスの微細精密フェムト秒レーザ加工の実現可能性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の見積もりと若干の価格の差があったため.
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