本研究は,超小型衛星に搭載される推進系の中でも,小型ノズルの内部の低レイノルズ数流れによる効率低下問題を実験的に説明することを主題としている.低レイノルズ数流れに関しては,これまでは数値計算よる予測が主に行われてきたが,本研究では,流れを乱さない可視光によるMTV法と樹脂造形が可能な3Dプリンタによって製作した樹脂3Dノズルとを組み合わせたノズル内部流れ分布測定という,小型ノズル内部流れ現象の定量的な評価方法を提案している.加えて推力スタンドによる直接推力測定も同時に行うことで,ノズル効率低下の要因それぞれの効果に対して定量的な比較を行う. 今年度は提案手法による実験を行うためのスラスタと真空設備の構築を行った.既に構築が完了していたスラスタシステムい加えて,アルゴンと水を推進剤として供給できるようにした.真空設備の構築では,特に重要となる背圧の調整を行えるように,スラスタノズルからではなく,他の箇所から推進剤を流すことで,スラスタノズルにおける推進剤流量が変化しても,ノズル下流の圧力を一定に保ち,対照実験が行えるようにした. 構築したスラスタに対して,電子銃を用いた密度分布測定実験を実施し,特にノズル下流の密度分布測定を重点的に実施した.電子順を用いた分布測定では電子ビームを可能な限り細く出力できるように電子銃のシステムの工夫を行った.令和元年度の途中で電子銃システムのうち高電圧システムが故障したため,その修復作業も実施した.
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