本研究課題(2年計画)では,薬物送達システムにおける放出制御の高効率化を目的とし,薬剤を含有させたマイクロバブルを,低強度超音波によって選択的に崩壊させる手法の開発を目指す.マイクロバブルへの選択的なエネルギー局在化を実現するため,超音波応答性の異なる複数のマイクロバブル群を混合して用いる手法を提案する.粒子径分布と数濃度を制御した混合分散系において,音響放射圧を介して連成したマイクロバブル間の共振現象を利用することによって,薬剤を付加したマイクロバブルの崩壊率の向上を試みる.シェル付きマイクロバブルの崩壊現象の微視的計測から,マイクロバブル群の大域的な崩壊率を実験的に定量化し,崩壊率の向上に寄与するパラメータを明らかにする. 令和2年度(2年目)では,昨年度に構築したマイクロカプセル(シェル付きマイクロバブル)群の評価手法を引き続き利用し,粒子径を選別したカプセル群の崩壊率を定量評価した.粒子径の選別は,開き目の異なる樹脂製のマイクロシーブ(ふるい網)を用いて行った.質量濃度4%のゼラチンゲル中にカプセルを固定し,超音波照射によって崩壊したカプセルの粒子径分布とその崩壊率を算出した.多分散カプセル群において,ある特定の範囲の粒子径をもつカプセルが崩壊した.粒子径をこの範囲に絞ってカプセルを選別することによって,崩壊率が向上することが示唆された.粒子径を選別したカプセル群では,崩壊率が極大となるカプセル群の数濃度が存在し,カプセル群の平均粒子径が小さいほど,崩壊率が極大となる数濃度は大きくなることが明らかとなった.これはカプセル群の共振周波数が数濃度に依存して変化するためである.照射音波の周波数が一定の場合,共振径のカプセル群には数濃度依存性が強く現れ,2種類のカプセル群を混合した場合,標的とする非共振のカプセル群において崩壊率の向上効果は得られなかった.
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