高度200km程度の地球超低軌道において動作する電気推進機の実験を実験室にて行うため、この軌道における環境模擬ができる風洞の作成を行った。このような環境の模擬は非常に困難であり、本研究において目指す、比較的安価な装置を用いて数百μ秒程度の比較的長い作動時間を目指す試みは世界的にも例のないものである。薄膜で仕切って空気を封入した小部屋にレーザーを集光することで生成した高温高圧空気が膜を破ることで動作する、破膜式の風洞を考案、製作し、性能の評価を行った。実験の結果、目標流速を達成する気流が数十μ秒程度維持できていることが確認できたものの、調査の結果この気流は密度が薄く、その後に計画している電気推進機に実験を行うのに十分でないことが分かった。これは膜が割れきるタイムスケールに比べて高速気流ができるタイムスケールの方が短く、膜が割れきる前に漏れた少量の空気が気流を形成しているためと考えられる。これを踏まえて膜を用ず、オリフィスで仕切った小部屋に空気を噴射し、そこにレーザー集光して動作する新しい風洞を設計し製作した。現在この風洞において十分な流量を流せることまでは確認できているが、風洞としての性能については現在調査中である。電気推進機部位については既に製作済みであり、必要な機材についても購入済みであるため、風洞の性能が確認でき次第直ちに推進機の実験に移ることが可能である。なお、新型コロナウイルスの影響により半年程実験が行えない時期が生じたため、丁度半年ほど予定よりも進捗が遅れている状況である。
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