本研究の目的はマグネシウム合金表面の耐食性を向上させるために従来にない新しい液中のキャビテーションを利用した技術を確立することである. 本技術のリン酸を利用した機能性キャビテーション法(MFC)では水中内で形成されるキャビテーション内が最もエネルギーを持って形成する位置が存在するため,高圧水噴射用のノズルから試験片表面までの距離を検討した.その方法は各距離で加工した試験片表面を残留応力測定,硬さ試験,断面観察による膜厚測定で行った.その結果,65 mmの位置で加工した表面は硬さと圧縮残留応力の向上,膜厚の増加が明らかとなった. 最適な条件で加工した表面の耐食性評価は塩水噴霧試験で行い,試験後は断面観察とグロー放電分析で評価した.試験後の表面は塩化物による付着物が少なく,MFC加工後の表面に形成される黄金色の皮膜が多く残存した.断面観察ではSEM―EDSで最表面を分析すると,リン酸皮膜が残存しており,酸化領域は母材まで拡大していなかった.また,グロー放電分析においても表面近傍付近にリンが多く検出された.これはMFC加工で形成した皮膜が試験後も母材の保護皮膜として機能を果たしていると考えられる.以上の結果より,Mg合金表面に耐食性皮膜を形成させる技術として,キャビテーション加工が有効であった.
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