研究課題/領域番号 |
19K23500
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
寺本 裕志 石川工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (70847376)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 複数噴流 / 噴流の発達 / 平均流れ特性 / 混合・拡散制御 |
研究実績の概要 |
本研究は「環状配置された複数ノズルによる円形噴流の混合制御」を行うことを目的とし,主に複数噴流の流れ特性を解明する.本研究の前段階として,6×6正方行列状複数円形噴流の下流域における流れ特性を調べた.円形噴流同士が合流後の速度分布は,半値幅を用いて整理すればノズル間隔によらず一致し,流れ場に相似性があることを明らかにした.また流れ場の断面速度分布を調べ,ノズル間隔が接近しているほど噴流の干渉が強まることで合流後の噴流の発達が早まること,合流後の噴流では軸スイッチング現象が生じていることを明らかにした.これらの研究成果については日本機械学会論文集への投稿論文を準備中である.一方で6×6正方行列状複数楕円形噴流の流れ特性について調べ,配列中心に近い楕円形噴流は軸スイッチングを生じながら隣接噴流と合流し,配列周囲側の噴流は隣接噴流のエントレインメントにより引伸ばされるように変形することを明らかにした.また合流後の下流域における流れ特性は複数円形噴流と同様に正方形単噴流に似た発達をしていくことを明らかにした.これらの研究成果についてはASME-JSME-KSME Joint Fluids Engineering Conference 2019にて発表し,論文が日本機械学会学術誌Journal of Fluid Science and Technology Vol.15 No.2へ掲載された.以上の成果を踏まえ,次年度は中心の円形ノズルに対しその外周へ環状配置された複数ノズルを有する複数噴流の流れ場を調べ,発達特性,環状配置複数噴流による中心噴流への影響,混合促進・抑制の条件を明らかにしていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績に挙げた6×6正方行列状複数噴流の流れ特性調査に時間を要した.熱線流速計を用いた断面速度分布の計測は,1ケースの測定について約4日~5日を要した.これは噴流の広がりや変形挙動を捉え,噴流の変形要因となる二次流れの速度ベクトルを得るために座標の刻みを細分した測定を行う必要があったためである.また,それらの測定結果の整理についても充分に時間を割く必要があった.一方,実験設備の導入や環状複数ノズルを有する新規ノズルの設計・製作が遅れていることも進捗に影響した.これは年度当初の予想を超えて,授業・課題の準備・実施,部活動引率(地区大会運営)等の校務に時間を割かなくてはならなかったためである.
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今後の研究の推進方策 |
6×6正方行列状複数円形噴流及び複数楕円形噴流に関する研究成果を踏まえ,中心の円形噴流に対して同心円上に複数の円形ノズルを環状配置した噴流について,熱線流速計を用いた速度分布測定実験や注入流脈法(煙)による空気噴流の可視化実験によって流れ特性を調べていく.具体的には,中心ノズル孔を直径30 mm程度の円形とし,半径45 mmの同心円上に環状に20 mm程度の円形ノズル孔を複数配置した複数円形噴流について,中心ノズルでの出口速度を一定として環状複数噴流のノズル孔数を3個から10個程度まで変化させていき,断面速度分布や中心軸上速度の減衰の傾向を調べる.これにより噴流同士の合流及び変形の挙動,円形単噴流と比較しての噴流の発達過程の差異といったノズル孔数による流れ特性への影響を明らかにする.また,中心ノズルでの出口速度に基づくレイノルズ数を変化させることで,各々の孔数における噴流特性のレイノルズ数依存性を明らかにする.さらに,環状複数噴流のノズル孔数を一定として,直径を20 mmから拡大・縮小することで中心噴流速度に対する速度比を変化させた際の影響や,ノズル孔数を一定として中心ノズルからの距離を変化させた場合の噴流同士の干渉・合流の様子を解明していく予定である.得られた研究成果は日本機械学会北陸信越支部総会・講演会などで発表し,日本機械学会論文集及び日本機械学会学術誌Journal of Fluid Science and Technologyへの投稿を計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
設備導入の検討や装置設計に時間を要した.また当該研究の前段階である6×6正方行列状複数噴流に関する研究の一部は,当方が研究協力者として参加した助成番号16K06071により賄われており,その成果発表に関わる旅費等が当該研究にて使用した助成額に含まれていないことなどにより,次年度使用額が生じている.次年度では既設の風洞設備用に新規の三次元トラバース装置及びその制御用パーソナルコンピュータの導入を予定している.また,外付けHDDやUSBメディア等のデータ記録用媒体,熱線プローブなどの消耗品購入費に充当する予定である.
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