研究課題/領域番号 |
19K23500
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
寺本 裕志 石川工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (70847376)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 円形噴流 / 熱線流速測定 / 副噴流 / 噴流の合流 |
研究実績の概要 |
円形主ノズル孔の周囲に,その直径よりも小さな円形副ノズル孔を複数個配置したノズルにより形成される噴流の流れ特性を解明することを目的として,副ノズル孔数をn=2~10に変化させ,副ノズル孔数が及ぼす流れ特性への影響を熱線流速計を用いた速度測定実験から明らかにした. 主ノズル直径d_1に対する副ノズル直径d_2の直径比をd_2/d_1=0.5とした場合,主噴流速度に対する副噴流速度の比U_s/U_mは1であり,想定したような速度差を有する噴流とはならなかった.噴流中心軸上の速度分布より,主噴流のポテンシャルコア長さx_c/d_1はおよそ5であり,副ノズル孔数による影響はみられなかった.また中心軸上速度の減衰特性は,副ノズル無(円形単噴流)の場合には流れ方向距離xの-1乗に比例するが,副ノズル有の場合には非円形噴流のようにxの-1/2乗に比例する減衰領域があり,この領域は主噴流と副噴流の合流により形成される噴流の発達領域といえる.合流後の噴流が完全発達すると,副ノズル無の場合に同じくxの-1乗に比例した速度減衰となることを明らかにした. 主噴流と副噴流の合流はノズル孔数によらずx/d_1=5~10の間で完了し,合流後の噴流の完全発達領域においては速度分布の相似性がみられる自己保存流となることを示した. また,噴流のエントレインメントについて速度分布の積分から流量を算出して検討し,ノズル出口直近での流量に対する下流断面での流量の比Q/Q_1の増加率が副ノズル孔数n=8の場合に最も小さく,周囲流体の巻き込みを抑えられることを明らかにした.さらに,噴流断面の変形を速度分布から可視化し,副噴流が楕円形に変形しつつ合流する様子や,合流後の完全発達領域では円形の単一噴流として発達することを明らかにした. 研究成果は2020年11月の日本機械学会第98期流体工学部門講演会にて発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度はCOVID-19により,実験装置の作成やデータ収集が滞った影響もあり,課題進捗としては遅れている.一方,副噴流による制御を検討する上では複数噴流の流れ特性に関する知見が重要であり,令和元年度に引き続き行ってきた正方行列状複数円形及び楕円形噴流に関する実験,データ整理と考察に時間を要したことも進捗の遅れに影響した.また当該正方行列状複数円形噴流に関する投稿論文の執筆に関しても,他業務との兼ね合いから時間を要しており(当該論文は令和3年度夏頃までに投稿予定),. 当初では円形副噴流の間隔や速度比の影響についても解明する予定であったが,現状では副ノズル孔数の影響の解明に留まった.当該研究成果について日本機械学会第98期流体工学部門講演会にて発表している.
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今後の研究の推進方策 |
当課題については令和3年度までの補助延長を承認いただいたため,本年度中に円形副噴流に関する更なる実験データ(ノズル間隔比の影響,主噴流と副噴流の速度比の影響)の集積・考察を重ね,噴流の拡散抑制あるいは促進に適した円形副噴流による噴流制御方法の確立を図る.次に,副ノズル形状を楕円形に変化させた場合の実験を行い,非円形副噴流による混合促進効果をねらった噴流制御の知見を集積する予定である.また,新規に噴流実験装置を製作し,流れの可視化を含めた副噴流を有する円形噴流の流れ特性の全容を解明していく. 本年度では,昨年度以上に研究活動に充てる時間の確保に努め,夏までに新規実験装置の製作を完了し,他業務が落ち着く8月以降に集中的に実験データを集積する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度中に新規実験装置の製作,熱線流速計・トラバース装置・計測制御用パーソナルコンピュータの更新・導入を予定していたものの,COVID-19により他業務への対応が多忙となったことで,実験装置用材料の購入に留まってしまった.本研究課題については,令和3年度までの補助延長を承認いただいたため,昨年度予定していた測定装置類の更新・導入に充てる.また,研究成果発表には日本機械学会流体工学部門講演会及び日本機械学会北陸信越支部講演会を予定しており,発表に関する支出及び論文投稿に係る支出に本補助を充て,有効に活用する予定である.
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