バイオミメティクス表面において付着・接着・滑りを制御する代表的な表面としては蓮の葉を模倣した超撥水表面があるが、その表面は微細な凹凸構造の壊れやすさや自己修復性、耐久性等において課題を有していた。本研究ではそれらの課題を克服し、近年注目を集めるウツボカズラの表面機能を模倣した新たなバイオミメティクス表面を潤滑表面へと発展させた。ナノからマイクロオーダーの様々な下地層の形状を用いて潤滑層の状態を評価したところ、潤滑流体を表面に保持する場合においては、凹凸が限りなく小さく、平滑であることが長期的な摩擦低減に寄与することが判明した。更に下地層と潤滑層間において、π-COOH、π-π等の分子的な相互作用が働く構成を選択することで、剪断耐性、環境変化耐性を有する潤滑表面の実現に成功した。その表面において、植物油と水といった環境適合性材料を用いた混合潤滑表面上で摩擦試験を実施したところ、室温環境かつ標準大気圧空気環境において摩擦係数が0.01以下の超潤滑性能を示した。加えて、ウツボカズラ表面の修復性能に着目し、潤滑油のない状態において表面が摩耗されたとしても、自己修復することで繰り返し低摩擦性を発揮する新たな表面の構築に成功した。これらの成果は特許出願済であり、現在化学工学における最高位の雑誌であるChemical Engineering Jounralに投稿し、レビュー中である。今後、本研究成果が低温環境下や繰り返し低摩擦性を示す新規潤滑性コーティングとして、EVやドローン等の従来潤滑表面の適用が困難な領域への実応用展開を加速する。
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