本研究は、細径配管内などの狭隘な空間において高い運動性能を実現するためのロボット構成法を提示することを目的としたものである。本年度は、主に複数台の細径アクチュエータの協調制御を取り入れた配管点検ロボットの研究を行った。具体的な研究概要は以下の通りである。 ① 複数台のアクチュエータの協調駆動方法の開発:長距離に渡る配管点検を実現するために、複数のアクチュエータを連結して駆動させる手法を開発した。複数アクチュエータを数珠つなぎに連結して同一の空気供給チューブにより駆動させるという新たな手法を提案した。後述の協調制御方法を組み合わせることで、3台のアクチュエータを組み合わせて距離10mにわたり走行可能なことを実験室環境において確認した。 ② 協調駆動のための空圧制御手法の開発:前述の駆動方法によって生じる応答性の低下や動作のばらつきなどの問題に対して供給空気の制御によりこれらを解決する手法を見出した。具体的には空気の初期吐き出し量を増大させるようなステップ状のバルブ制御を行うこと、およびエアチューブに意図的な圧力損失を付与することによって、これら問題が改善が可能であることを確認した。 研究期間全体を通しての主な学術的成果は、(1)複室構造を持った新たなソフトアクチュエータの駆動原理を提案したこと、(2)そのアクチュエータを用いた新しいロボット走行原理を提案したこと、(3)複数のアクチュエータ一括制御する空気圧制御手法を提案したこと、である。さらに、前述の成果を踏まえた研究成果物として狭隘な細径配管内を点検可能なロボットシステムを開発した。本ロボットシステムはカメラを搭載した走行部が配管内を自走するもので、内径25mmの配管内を約45mm/s(水平時)で走行しながら映像を撮影することが可能である。リアルタイムで内部の異常を確認することができるため、配管設備点検等での利用が期待できる。
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