本研究は,動的力センサ技術を実装したマイクロフローセルで,ハイスループットな細胞の力学特性計測が実現可能かという機械工学的知見の探求を進めている.従来マイクロ流体チップを用いて検討されてきた同様の計測は,細胞の搬送に,計測を独立過程とした点,流体制御が困難であった点,計測動作の所要時間が長く,高いスループットを実現できていない点に問題があった.そこで,フローサイトメトリの手法を転用し,細胞の力学特性計測技術をAFMに準ずる動的手法に拡張する手法の検討を行った.まず,AFMの自励式振動式力計測技術の転用による,力計測技術の理論開拓をすすめた.従来は画像センサを用いて構造物の変位を読み取るセンサを作製,使用していたが,構造物のたわみを利用するため,流路中で不要な領域に細胞を圧縮して計測する必要があり,スループットの口上を期待できなかった.そこで新たに,レーザを用いた変位計測技術と,発振回路を形成して微細構造を共振周波数で振動させる回路技術を開発した.また,この回路を用いて,圧電アクチュエータを駆動し,シリコンの振動式力センサの構造体を実際に共振周波数で振動させることに成功した.また,本研究の申請段階では,フローサイトメトリを基軸に,高いスループットを実現する技術を開拓するものであったが,さらに汎用的かつ制御性の高い,細胞様の微小球体の搬送を行う機構として,セル形状のマイクロ流体ユニットに交流電場を形成して,誘電泳動力によって細胞を搬送する技術確立した.
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