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本研究では、電池切れで探知困難な受電機へのマイクロ波無線電力伝送の実現に向け、受電機消費電力ゼロの受動伝搬路推定法を確立することを目的とする。
本手法では、受電機に搭載されるレクテナ（アンテナ＋整流器）の導通・非導通状態が入力電力の強弱に応じ非線形的に変化する性質を逆利用し、送信電力変化時に送電機側で観測される散乱波信号から、線形変化する環境散乱波をディジタル減算除去し、非線形変化するレクテナ散乱波のみ抽出することで所望伝搬路を推定する。
一方、前年度の検討にて、送信電力制御に用いる可変増幅器の入出力特性が時間や温度に応じて変化する性質を持つことから、事前に取得した送信電力情報を参照し減算を行うと、環境散乱波が除去し切れず所望伝搬路の推定精度が劣化することが課題となっていた。
そこで今年度は、事前情報不要なブラインド受動伝搬路推定法について検討した。提案法ではまず、環境散乱波がレクテナ散乱波に対し支配的であることを利用し、送信電力変化前の散乱波信号に対しヌルステアリングを行うことで、実質的に環境散乱波のみを空間的にフィルタリングする。そして、空間フィルタリング後、送信電力掃引時の散乱波信号情報を積算することで、残留するレクテナ散乱波成分のみが強調され所望伝搬路を抽出・推定可能となる。
シールドルーム内の多重波環境にて実施した無線実験において、16素子方形アレーアンテナに対し提案法を適用することで、レクテナ位置計33点の内、29点において80%以上の伝搬路推定精度を達成した。以上の結果から、提案法により送信信号の事前情報および受電機のフィードバック不要で高精度に伝搬路推定が可能であることを実証した。
主要成果として、本研究に関し、アンテナ伝播研究会にて招待講演を行い、これを含む計5件の一連の研究発表内容が評価され、指導学生が2020年度電子情報通信学会東北支部優秀学生表彰を受賞した。
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