2020年度は,制御理論の構築に注力し一定の成果を挙げた.まず,本研究の主目的である車輪を適切に壁面に押し付けながらのドローン制御の実現に向けた理論研究を行った.その際,当初の研究計画に含まれていなかった,力制御の利用可能性に着目した.主にロボットアームの制御に利用されている力制御を,受動車輪付きドローンに対する制御に拡張し,壁面への衝突・接触力の過度な増大を抑制可能な対故障性に優れる制御則を提案した.さらに,力制御を適用した際の課題であった目標位置への収束性を向上させるため,従来の位置制御と力制御を状況に応じて連続的に切り替える制御則を新たに提案した. また,タイルで覆われた建築物の壁面検査に特化した手法として,タイル目地の格子状模様をカメラで観測した際の視覚情報を利用した視覚フィードバック制御の提案も行った.具体的には,Image-Based Visual Servoing (IBVS) と呼ばれる代表的な視覚フィードバック制御則を車輪付きドローンで格子状の模様を観測している状況に拡張し,制御性能を向上させることに成功した.加えて,機械学習手法の一つであるガウス過程回帰を利用した受動車輪付きドローンの壁面走行制御則の提案も行った. 実験環境に関して,モーションキャプチャを用いた環境構築に成功し,より高精度なデータ計測・実験実施が可能となった. 上記の研究成果の多くは,研究計画に含まれていないものであり,制御理論構築に関して当初の予定より多くの進捗が得られたと評価できる.また,上記の研究結果に関して,複数の国内学会発表を予定している.
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