研究課題/領域番号 |
19K23514
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 一 京都大学, 大学院横断教育プログラム推進センター 先端光・電子デバイス創成学卓越大学院, 特定助教 (40853346)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | SiC / MOS界面 / Hall移動度 / 散乱過程 / モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
炭化ケイ素(SiC)MOS界面には高密度の界面準位が存在し、これがSiC MOSFETの特性を劣化させるとともに、SiC MOS界面におけるキャリア輸送の理解を困難としている。本研究では、SiC MOS界面におけるキャリア輸送の理論モデル構築を目指して研究を行う。 2019年度には、まず、シリコンなどのMOS界面においても一般的なキャリア散乱過程である、フォノン散乱・イオン化不純物散乱・界面ラフネス散乱に加え、SiC MOS界面特有の散乱過程として、界面固定電荷および界面準位捕獲電子によるクーロン散乱・界面近傍に存在しうる電気的に中性な欠陥による散乱を考慮して、モンテカルロ法によりHall移動度の計算を行った。この結果を、実験的に報告されているSiC MOS界面におけるHall移動度と比較して解析を行った。 また、上記の散乱過程に加えて、SiC MOS界面に存在しうる電気双極子によるキャリア散乱の定式化を行った。このような散乱が移動度に与える影響について、上で述べた界面固定電荷などによる通常のクーロン散乱との比較を行った。 さらに、上で述べたモンテカルロ法によるキャリア輸送計算の手法を利用して、ワイドギャップ半導体における高電界印加時のキャリア輸送の解析も行った。実際の材料のバンド構造ではなく、あえて解析的なバンド構造を仮定して計算を行うことで、ドリフト速度や衝突イオン化係数など、高電界キャリア輸送にバンド構造が与える影響に関する物理的理解を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SiC MOS界面において存在しうる散乱過程に関し、欠陥分布の空間的相関なども含めてモデル化して散乱レートの定式化を行い、実験的に報告されているHall移動度をある程度再現する計算結果を得ることができた。また、高電界印加時のキャリア輸送についても有益な物理的洞察を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
SiC MOS界面において想定されうる散乱過程について、さらに定式化を進めるとともに、量子輸送理論を用いた解析とも組み合わせて、様々な界面欠陥やポテンシャル揺らぎがSiC MOS界面におけるキャリア輸送特性に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に本予算により計算機の購入を予定していたが、別の予算により購入した計算機である程度の計算能力を実現できたため、2020年度の請求額と合わせてより高性能な計算機を購入する計画に変更した。また、新型コロナウイルスの感染拡大により、出張が中止となった。
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