高温・高圧・高放射線環境下などの厳環境で動作する集積回路は石油・ガスの掘削作業、惑星探索、エンジン燃焼室の燃費向上など様々な応用先が存在する。既存のシリコン集積回路では材料物性の限界により動作が不可能であるため、ワイドギャップ半導体である炭化ケイ素(SiC)による集積回路の作製が期待されているが、Si集積回路の構成デバイスであるCMOSをSiCで作製すると、閾値電圧が大きく変動するなど実用化に大きな課題がある。 本研究では、集積回路の構成デバイスとして接合型トランジスタ(JFET)を使用することでCMOSが抱える信頼性の問題を回避し、厳環境動作可能なSiC集積回路の開発を目指している。さらに、JFET構造の全てをイオン注入で作製するという特徴を活かし、横型パワーMOSFETを兼ね備えるハイブリッド集積回路開発へと展開する。 本年度は、昨年度確立したコンパクトモデルを基にJFET論理回路の温度特性予測を行った。既存のシリコンCMOS論理回路で採用されている設計指針に基づくと、SiC JFET論理回路では温度上昇に伴い論理閾値電圧が大きく変化することを明らかにした。そこで、SiC JFET論理回路に適した設計指針を提案し、論理閾値電圧の変動抑制が可能となることを示した。また、横型パワーMOSFETについて、更なる特性向上と耐圧評価を行った。昨年度作製したパワーMOSFETは非常に高い特性オン抵抗を示していたが、窒化処理による界面欠陥低減手法を適用することで、オン抵抗を大幅に低減した。耐圧評価を行うと、600V以上の耐圧を有することが確認できた。
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