研究課題/領域番号 |
19K23520
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
木下 雅之 千葉工業大学, 工学部, 助教 (80845149)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 可視光通信 / イメージセンサ / IoT |
研究実績の概要 |
本研究では、スマートフォンカメラを受信機に想定した可視光通信システムの高度化を検討する。単眼カメラが用いられてきた従来の可視光通信では、既に実用化された例もあるが、通信可能距離やデータレートに課題を残している。これに対し、本研究では、近年スマートフォンに搭載されつつあるデュアルカメラ・トリプルカメラといった複数カメラを利用した受信機構成を考え、上記課題の改善を目的とする。具体的には、複数カメラから同時刻に得られる画像を用い、ダイバーシティ受信を検討することで、ビット誤り率特性や通信可能距離といった通信性能の向上を目指す。さらに、複数カメラから取得可能な奥行情報を活用した性能改善を図る。 平成31年度は、実験環境の構築として、LEDアレイ送信装置および複数カメラ受信装置の開発を行った。また、デュアルカメラと可視光通信用LED送信装置を用いた奥行情報の推定アルゴリズムを検討した。奥行情報の取得に関しては、可視光通信用LED送信装置の高輝度・高速点滅の特徴を利用することで、高精度な距離推定が可能であることを実験により確認し、おおむね順調に進展している。一方で、当初計画していた、複数カメラを用いたダイバーシティ受信による通信性能改善については、実験環境の構築に多くの時間を割いたため、実機実験までは至らなかった。しかしながら、関連研究の調査、基本的な理論やアルゴリズムの検討を進めており、次年度以降、速やかに実機実験に移行できるように準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験環境の構築、とりわけ、複数カメラ受信システムに用いた特殊産業用カメラ(IDS社製・UI-3250CP-M-GL Rev.2)の納品に時間を要し、当初予定していた複数カメラを用いたダイバーシティ受信に関する実機実験までは至らなかった。しかしながら、基本的な理論やアルゴリズムの検討を進めており、次年度以降、速やかに実機実験に移行できるように準備を整えた。 以上より、進捗状況は当初の計画より、やや遅れているが、速やかに実機検証に取り掛かる準備はできており、次年度に大きな遅れが生じることはない。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、平成31年度に構築した実験環境と検討した理論を基に、複数カメラ受信機の実機実験を進めると共に、奥行情報を利用した性能改善に関しても注力する。また得られた成果は可能な限り、国内外の学会等で発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、受信装置として、2台の高速度カメラの購入を予定していたが、これはグローバルシャッタ方式で撮影されるものであった。イメージセンサ可視光通信において、近年、データレート向上の面で、ローリングシャッタ方式のカメラが注目されている。そのため、ローリングシャッタ方式が利用可能な産業用カメラを2台購入したところ、高速度カメラに比べ安価で購入することができた。平成31年度に購入した産業用カメラは、ローリングシャッタ方式とグローバルシャッタ方式の切り替えが可能であり、実験パラメータの拡張性が高いが、グレースケール画像の撮影に限定されている。そのため、次年度は、使用額の差額を利用して、カラー撮影可能な産業用カメラ(IDS社・UI-3250CP-C-HQ Rev.2)の購入に充てる。また、開発した送信装置の改良のための電子部品等の購入に充てる。
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