研究課題/領域番号 |
19K23522
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石川 瑞恵 日本大学, 工学部, 講師 (60751865)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | SiスピンMOSFET / スピン伝導 / ホイスラー合金 / シリコン / 界面 |
研究実績の概要 |
近年進展が目覚ましいIoT(モノのインターネット)技術を支える電子機器等にとって,半導体デバイスの更なる性能向上は必要不可欠である.新しい動作原理に基づくSiスピンMOSFETは,将来の電子機器の更なる小型化・低消費電力化への貢献が期待できる極めて重要な新型半導体デバイスである.SiスピンMOSFETの実現には,Siへのスピン注入技術が最重要課題であり,実用レベルのスピン信号強度の観測が必須である.本研究では,これまでの知見を基に,界面制御技術によりスピン信号強度を増大させることを目的とする. これまでのSiスピンMOSFETの研究から得られた知見を総合的に考察することで,強磁性体/トンネルバリア構造の界面部がスピン信号の低減を招く原因であり,界面部での強磁性体電極の結晶規則度を向上させることがスピン信号強度を増大させるうえで重要であることを明らかにした.また,これまで強磁性体/トンネルバリア構造の界面部において強磁性体電極の結晶規則度を向上指せるため,強磁性体電極としては,トンネルバリア(MgO)層との格子ミスマッチが小さく,かつハーフメタル材料として期待されるホイスラー合金Co2MnSnの結晶成長を試みた.スパッタリング法を用いてMgO(001)基板上にCo2MnSnを形成した結果,A2構造を有したCo2MnSnが形成され,室温成膜でも結晶化しやすいことを明らかにした.さらなる結晶規則度の向上に向け,スパッタリング装置内での基板加熱や加熱成膜の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの知見から,強磁性体/トンネルバリア構造の界面部がスピン信号の低減を招く原因であり,界面部での強磁性体電極の結晶規則度を向上させることがスピン信号強度を増大させるうえで重要であることを明らかにした.また,ホイスラー合金Co2MnSnの結晶成長では,トンネルバリア層上で結晶化しやすいことを明らかにし,今後の指針を明確にすることができた.以上より,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,スパッタリング装置の改造を行い,Co2MnSnのチャンバー内での基板加熱や加熱成膜を検討する.さらにスピン伝導評価を行うため,早期に素子加工プロセスを構築する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】台風19号による学内浸水被害により、使用予定であった装置が使用できなくなり、それにともない予定していた研究を延期せざるを得なくなった。またコロナ禍により、予定していた学会発表も中止となり、計画していた出張も取り止めとなった。 【使用計画】ホイスラー合金Co2MnSnの結晶規則度を向上させるため,スパッタリング装置の改造を行い、さらにスピン伝導評価を行うため,素子加工プロセスを構築する予定である。
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