研究課題/領域番号 |
19K23531
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
杉下 佳辰 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (70845263)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ネットワーク科学 / テンポラル・ネットワーク / 交通システム / 多層ネットワーク / 脆弱性 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の3つの研究に取り組んだ。 (1)航空システムは、複数の航空会社のネットワークから構成されており、それぞれのネットワークが社会経済的事象や企業戦略を反映して、時間的に変化している。本研究では、テンポラル・ネットワーク理論を応用し、コロナ禍における米国航空会社17社のネットワークの時系列的な構造変化を定量的に分析した。現在この研究成果をまとめた論文を執筆中である。また、航空システムに関する国際会議ATRS 2022でも成果発表を予定しており、アブストラクトが既に受理されている。 (2)航空ネットワークと同様、社会的ネットワークも時間的にその構造が変化するテンポラル・ネットワークである。しかし、このような時間変化が集団の意見形成に及ぼす影響は十分に明らかでない。本研究では、時間変化する社会的ネットワークにおける意見形成ダイナミクスを、紐帯減衰ネットワークと呼ばれる枠組みを用いて定量的に分析した。この成果をまとめた論文をPhysical Review Researchで発表した。 (3)上記のふたつのネットワークと同様、水道ネットワークも時間的に発展している。しかし、この成長ダイナミクスについては十分に明らかにされていない。本研究では、複雑なインプットを要さない単純なモデルで、現実の水道ネットワークに近いネットワークを生成できるモデルを提案した。この成果をProceedings of the Royal Society Aで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、ネットワーク科学における多層ネットワーク理論の適用のみを計画していたが、テンポラル・ネットワーク理論を適用することで、航空ネットワークの発展パターンを定量的に明らかにするなど、当初の計画以上の成果が得られた。コロナ禍での航空ネットワーク構造の変化についても研究成果が出ており、発表を予定している。また、テンポラル・ネットワーク理論の応用として、社会的ネットワーク上の意見形成ダイナミクスに関する研究成果および水道ネットワークの成長に関する研究成果も既に論文として発表しており、当初の計画以上に研究を発展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は航空システム関連の国際会議ATRSで研究成果を発表予定である。これまではネットワーク科学の国際会議へと参加し、フィードバックを得ていたが、今後は航空システムの専門家からもフィードバックを受け、研究を発展させていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた学会に参加することができなかった。また、論文も現在執筆中である。繰り越し分は主に成果発表に関わる費用(国際会議参加費、論文投稿費等)へと使用する予定である。
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