研究課題/領域番号 |
19K23534
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木戸 隆之祐 京都大学, 工学研究科, 助教 (40847365)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 不飽和砂 / 三軸圧縮試験 / 排気条件 / 排水条件 / X線CT / 間隙流体 / 連続性 / 不均質性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,従来実施してきた排気-排水条件,排気-非排水条件での不飽和砂三軸試験に加え,非排気-非排水条件での不飽和三軸試験を行い,X線CTを用いて間隙流体の微視的挙動を解明し,マクロな応答への影響を解明することである.非排気-非排水条件は,せん断に伴い間隙空気圧と間隙水圧が両方変化する条件であり,例えば土構造物へ水が浸透し空気がトラップされた状態で短時間にせん断変形が生じる場合の不飽和土の力学挙動の評価を想定している.2019年度は,従来の試験条件における微視的挙動と巨視的応答の解明と並行して,非排気-非排水条件での試験実施を実現するための装置改良を進めてきた. 従来の試料キャップと新たに作製した試料キャップを用いて気乾珪砂の三軸圧縮試験を実施したところ,後者の場合はより高いピーク応力が得られ,一方向にひずみの局所化が生じるという異なる変形モードを示すことを確認した. 当該年度は,従来の試料キャップを用いて,初期飽和度が低い供試体を作製して排気-非排水条件の不飽和三軸試験を複数回実施し,応力ひずみ関係等の再現性を確認した.CT撮影を行った結果,間隙空気は撮影領域内で一貫して高い連続性を示し形態変化はしないことがわかった.一方,供試体全体の飽和度や間隙比が同等であっても,局所的な飽和度はケース間でばらつきが見られ,それにより間隙水の連続性や分布も様々であるといった不均質性を示すことがわかった.また,CT画像解析により間隙水の曲率を調べると,本研究グループで過去に確認していた「非排水条件ではせん断により間隙水の曲率が低下する」という傾向を改めて確認した.すなわち,上記は不飽和土の排気-非排水条件での三軸圧縮下において特有に見られる特性であるといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに作製したキャップを用いた場合,従来のものを用いた場合と異なるせん断変形モードが見られた原因は,軸方向の荷重の反力をとるためにステンレス板を用いているが,それにより従来の者に比べ質量が大きくなったこと,キャップに自由度があり点荷重の載荷となったことと考えられる.試料キャップ全体の質量を小さくし,かつキャップの自由度を抑え面荷重となるように工夫することで,従来の試料キャップを用いた場合と同等の巨視的応答が得られると考えている.非排気-非排水条件の不飽和砂三軸圧縮試験を行うための試料キャップの改良は,材料の再選定や寸法の調整を行うのみであり,従来用いていた三軸試験装置の改良はしないまま実験が可能であることを確認している. 三軸試験については,予定していた非排気-非排水条件での実験は実施できなかったものの,非排水条件で過去に確認していた巨視的応答ならびに微視的特性の再現性を確認することができた.また,同じ供試体の作製方法,条件であっても,局所的に見ると間隙水の連続性や分布に不均質性があることを明らかにできた.今後はこのような不均質性が巨視的応答に対しどのような影響を与えているかを調べる予定である. 当初予定していた実験は装置の一部修正でできる見込みであること,および不飽和土の微視的な特性を確認,明らかにできた点で,当該年度の研究はおおむね順調に進展していたと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
試料キャップ全体の質量を小さくし,かつキャップの自由度を抑え面荷重となるように工夫することで,従来の試料キャップを用いた場合と同等の巨視的応答が得られると考えている.具体的には,元々使っていたステンレス材をアクリルに変更し,部材の大きさをやや小さくするなどを検討している.また,キャップを面荷重にするため,載荷ロッドがキャップにより深く挿入されるよう,キャップ上面の溝を深くするなどの追加工を施す.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議旅費を計上していたが,別の財源を執行することとなったため次年度使用額が残った.また,当初は実験や画像解析を代行してもらう予定で謝金・人件費を計上していたが,装置の改良に予想以上に時間がかかり目的の実験を行うことができなかったため,その分,余剰金が発生した. 次年度では,装置の改良のための消耗品を購入するほか,計測機器や計測PCを新たに購入する.
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