研究課題/領域番号 |
19K23540
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
太田 修平 神奈川大学, 工学部, 助教 (00846462)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 信頼性 / 従属故障 / 大規模システム / 多変量確率モデル / コピュラ |
研究実績の概要 |
複数のシステムが相互依存的に故障することを、従属故障という。例えば送電網や通信ネットワークのような大規模システムでは、従属故障を原因として、広範囲にわたる故障が生じるリスクがある。本研究はシステムの信頼性に関わる情報から、このリスクの評価手法の高精度化、およびそのリスクを低減させるための技術開発を実施する。従来よりも正確なリスク評価手法を開発し、システムの設計技術に応用する。これによって本研究は、大規模故障に耐性のある社会基盤としてのシステムの構築に貢献し、社会の安全・安心の担保を目指す。 令和元年度は、大規模システムの信頼性評価のために数理モデルを開発し、その解析手法の構築に取り組んだ。従属故障の要因を考慮するために、サブシステム間の従属性(従属故障の起こりやすさ)を、コピュラ(接合関数)によって表現した。コピュラにはさまざまな種類があるため、今年度は比較的、数学的に解析しやすくかつモデルの表現能力が高いFGMコピュラを用いた場合の、システムの信頼性解析を行った。研究成果としては、第一にこのFGMコピュラのパラメータを精度よく推定する手法を構築した。これにより、サブシステムの故障時刻データから、システムにおける従属故障の発生リスクを定量的に評価することを可能とした。本来、従属性とは目に見えるものではないため、従属故障の発生有無を判断するのが難しかったが、本結果によってそれが定量的に評価可能となった。第二に、提案モデルにもとづき、直列構造を有したシステムにおいて従属故障が起こる場合の、運用コストを最小化する最適保全方策を明らかにした。両結果はそれぞれ国際会議MMR2020とPRDC2020にて報告を行った。また、これらの活動を通して得られた、関連する研究成果は国内の各種研究会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究計画通り、FGMコピュラを用いて大規模システムに対する信頼性解析手法の構築を実施した。これによって得られた研究成果を、現在2本の論文にまとめ、それぞれ査読付きの学術雑誌に投稿中である。さらに学会報告で得られたコメントから、研究計画段階では見落としていたコピュラとコピュラを組み合わせることで、より汎用的な信頼性評価手法を開発できることを発見した。これによって研究内容の理解が深まり、また今後の発展方向が定まった。このことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画に従い、FGMコピュラ以外のコピュラの解析を進め、より汎用的な信頼性評価手法の開発に取り組む。当初の計画では、令和二年度に2件の国際会議で研究成果を発表予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、それぞれ延期となったため、その予定を次年度に延期することとする。代わりにWeb会議システムで開催される研究会に積極的に参加し、他の研究者からの評価を受ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主要な研究成果を雑誌論文に掲載されるまでには至らなかったため,それに掛かる掲載料やオープンアクセス料に充当する予定であった予算を次年度に繰り越した.現在までの進捗状況に記載した通り,現在2本の論文を投稿中であることから,これらが出版される際には,今年度と同様の用途で使用する.
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