免震構造は、変形性能とエネルギー吸収性能を併せ持つ免震装置により建物固有周期を伸長させ、通常設計レベルの地震動に対して上部建物の安全性を大きく向上させる。免震すべり支承は、弾性変形とすべり挙動によるバイリニア特性が明快な支承・減衰一体型の装置であり、導入事例が多い免震装置である。免震すべり支承の地震時の力学特性変動を再現するために、三軸連成解析や熱・力学連成解析などの高度な技法が提案されている。しかし、これらは通常の構造解析プログラムでは対応が困難である。また、免震すべり支承の力学特性に関して、速度や温度に対する依存性の同定や計算モデルの構築はある程度進展しているものの、研究成果が散在しているのが現状である。本研究は、これらのモデルの統一や合理化を図ることで、使用性と拡張性の高い解析システムを開発し、いっそうの発展および普及に寄与するものである。 本研究では、オープンソースの有限要素解析フレームワークであるOpenSeesに、免震すべり支承の数値解析モデルを実装する。当フレームワークは、主たるプログラミング言語としてC++を使用し、複数の研究者が開発に参加できるようオンラインで整備されている。初年度において、高度な計算技法である熱・力学連成解析手法を対象とし、より単純な計算モデルへの分解が可能となる解析システムを構築した。具体的には、熱伝導解析モデルをC++のクラスを用いて力学モデルから分離し、任意の熱伝導解析モデルと力学モデルの組み合わせが動作可能となるよう整備したものである。また、第2年度において、鉛直と水平二方向の連成挙動を考慮した弾性支承の力学モデルと、特殊形状のすべり材の水平二方向移動を考慮した熱伝導解析モデルとを組み合わせて、熱・力学連成挙動解析を行った。これにより、本研究で用いた計算モデルの分割・統合手法の有効性を確認した。
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