研究課題/領域番号 |
19K23552
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
陳 逸鴻 長崎大学, 工学研究科, 助教 (00846123)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 複合構造部材 / 圧縮ブレース / コンクリート充填鋼管 / 耐震補強 / 中心圧縮実験 |
研究実績の概要 |
離島,山間部,発展途上国など重機が使用できない地域の建築構造物に対して,従来の補強工法より施工が簡易なCFT-SS補強工法が開発されている.代表者は本工法に用いる圧縮型ブレースの軽量化とさらなる施工の簡便化を図るため,鋼管に木材とグラウトで充填したハイブリッド構造部材(以下,WGFT)の開発に着手している. 2019年度では,WGFTの力学特性と基本性能を解明するために,異なる長さ・断面形状・木材の割合を有するWGFTブレースを対象に,中心圧縮載荷実験を行った.まず,長さ0.3mの短柱試験体を18体載荷し,2019年度より前から載荷を行った短柱試験体と合わせて,計82体の実験結果を分析した. WGFTの弾性剛性は3つの材料の値を単純累加することで得られ,降伏後の性状も概ね別途提案している計算方法の予測通りであることがわかった. 次に,長さ1.7mの長柱試験体を6体載荷した.実際の耐震ブレースは細長い部材で,圧縮力を受けると座屈というたわみが急増する現象が発生する.細長いブレースに近い長柱試験体を用いた載荷実験で,座屈で決定するWGFTブレースの最大耐力と変形能力を検討し,さらに木材が全く入っていない(木材0%の)試験体と比較した.木材をWGFTの断面中心に配置することで,断面積の約50%を木材に置き換えても,WGFTは木材0%の試験体と同程度の座屈耐力を維持できることがわかった.一方で,木材を配置したことにより,約20%の軽量化が実現できた. WGFTの長柱試験体はまだ少なく,試験体数を増やして,データを蓄積する必要があるが,2019年度の載荷実験結果から,WGFTの基本性能を把握し,その実用性を確認できた.また,本研究の実験結果は,新しい圧縮型ブレースの開発以外に,3種類以上の材料によるハイブリッド構造部材の複雑な挙動を解明することにも繋がる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年12月の時点で,短柱試験体18体,長柱試験体6体の載荷実験を実施し,データ整理と分析が概ね完了している. 2020年2月に,次に行う予定の3.0m級試験体のための,材料の発注と試験体の作成は予定通りに進めていた.この時点では予定通りに進められている. しかしながら,新型コロナの感染拡大を防止するため,2020年3月では,長崎大学の呼びかけに応じ,実験活動を最小限に自粛し,2020年4月から6月は,長崎大学の方針に従い,対面形式による実験関連の活動を中止することとなった.そのため,現時点で,本研究の実験関連活動は3ヶ月遅れる見込みになり,今後の新型コロナの影響により,さらに遅れが生じる可能性が高いと思われる. 以上のことを踏まえ,4月からは数値解析などの予定は早め,実験以外の内容を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
本来は,2020年4月に3.0m級の長柱試験体の中心圧縮試験を行い,実験結果のデータ整理と分析を完了してから,木材・グラウト充填鋼管(WGFT)の数値解析モデルの開発と妥当性の検討をする予定であった.しかしながら,新型コロナの感染拡大防止のため,長崎大学の方針に従い,6月までの実験活動を中止することにした. そのため,数値解析関連の予定を早め,4月から行っている.6月までに,数値解析モデルを組み立て,その妥当性を2019年度までに行った実験の結果と比較し検討する. 大学での実験活動が再開可能となった際,直ちに3.0m級の長柱試験体を用いた載荷実験を行い,得られたデータと開発した数値解析モデルを比較する.また,その実験結果から,2020年度後半の追加実験の検討,並びにWGFTの耐力算定法を確立することを順次に進めていく予定である.
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