離島,山間部,発展途上国など重機が使用できない地域の建築構造物に対して,従来の補強工法より施工が簡易なCFT-SS補強工法が開発されている.代表者は本工法に用いる圧縮型ブレースの軽量化とさらなる施工の簡便化を図るため,鋼管に木材とグラウトで充填したハイブリッド構造部材(以下,WGFT)の開発に着手している. 2020年度では,実際の構造物に耐震部材として用いるときの細長比(外径と長さの比率)を想定して,外径100mmで長さ2000mmのWGFT長柱試験体4体,外径100mmで長さ2600mmのWGFT長柱試験体8体に対して中心圧縮荷実験を行い,WGFT長柱試験体の力学特性を検討した.いずれの試験体も曲げ座屈により最大耐力を迎えたため,従来の木材を配置しない(木材0%の)試験体に比べて,断面積の70%を木材に置き換えたWGFT試験体の最大耐力があまり変化しないことがわかった.一方で,木材を配置したことにより,最大で23%の軽量化に成功している.座屈耐力があまり変化しないため,木材を配置したより軽量的なWGFTは従来の圧縮型ブレースと同等な実用性を有すると言える. また,WGFTに用いる3種類の材料それぞれの座屈耐力計算値を単純に累加した座屈耐力評価式を用いて,上記試験体の実験結果と比較した結果,提案の耐力評価式が実験結果を精度よく評価できることを確認した. 以上の結果から,本研究は新しい圧縮型ブレースの開発と同時に,3種類以上の材料によるハイブリッド構造部材の複雑な挙動の解明につながっていると思われる.
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